恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

その日からサヨナラの準備が始まった。


ひとつめ。


お父さんとお母さんに決意を伝えて、上京を許してもらうこと。


ふたつめ。


東京へ行く決心が固まったことを律子おばさんに伝えること。


みっつめ。


美波ちゃん。


里菜と、悠真。


大切な人たちに、島を出ることを打ち明けること。


のこる準備はあと4つになった。


とにかく暑くて長かった夏休みが終わり、新学期を迎えた。


すると、クラス中が進路に向かって動き始めた。


忙しくて慌ただしくて、でも、静かな日々が過ぎていった。


そして秋が来て冬が過ぎ、春がやってきた。


ちょうど1か月前。


流れるように過ぎて行った日々の中、里菜の進路が決まったのは2月上旬の冬晴れの午後。


また寒緋桜がぽつりぽつりと咲き出した日、里菜が那覇の美容師専門学校に合格した。


その日、悠真のお父さんがあたしたち3人のためだけに店を貸切にしてくれて、とびきりスペシャルなタコライスを振る舞ってくれたのだ。


あたしは東京で、里菜は那覇で、悠真はここ与那星島で頑張ることを誓った。


あたしたちは


タコライスを肴にジンジャーエールで3人の未来に乾杯した。


「今度集まる時やビールと泡盛で乾杯さー」


なんて悠真は笑っていたけれど、あたしは心から笑うことができなかった。


そんなあたしを里菜は訝しげに見てきたけれど、何も言ってこなかった。


里菜は気付いていたのかもしれない。


あたしのゆるぎない決意に。


だから、何も言ってこなかったのかもしれない。


3月。


島は春という季節を飛び越えてまるで初夏を迎えたような真っ新な青空が広がっていた。


あたしは4つめの準備をするために、里菜を家に呼んだ。


「ごめんね。荷造りで忙しい時に呼んだりして」


「いいさ、気にさんけー。それより、頼みごとって何ね」


何も知らずにやって来た里菜は、


「あのね」


あたしのお願いを聞いた瞬間、目を点にして一瞬固まった。