「……か……いとっ……」
夕日色に染まる浜の片隅で、あたしはブイを抱きしめて声を押し殺して泣いた。
もう、あたしの想いが彼に届くことはない。
この涙が枯れたら、準備を始めよう。
サヨナラの準備を、しよう。
そう心に決めて、泣き続けた。
――葵は、おれのいちばん星です、きっと
海斗。
あたし。
海斗のいちばん星に……なりたかった。
「ニャー」
ブイを抱きしめて泣くあたしに、ルリはぴったり寄り添っていてくれた。
あたしが泣き疲れるまで、ずっと。
泣くだけ泣いて、あたしは立ち上がった。
もうじき、夕日が水平線の向こうに沈む。
いつまでもここで泣いているわけにはいかない。
みんな、前に進んでいるのに。
あたしひとり立ち止まっているわけにはいかない。
準備を始めないと。
海斗がくれたお土産とブイをしっかり抱えて煌めく水面を見つめて深呼吸したあたしに、
「ニャー」
どこ行くの? 、と問いたげな瑠璃色の瞳が見つめてくる。
あたしはズヒッと鼻を啜り、ルリに微笑みを落とした。
「バイバイ、ルリ」
「ニャオ」
ルリはひとつ鳴いたあと、向こうにいる大切な家族の元へ走って行った。
「元気でね、ルリ」
あたしは夕暮れ迫るオレンジ色の浜をあとにした。
ガラスのブイをしっかり抱きしめて。
帰ると、おばあが縁側にちょこんと正座して、熱いお茶を啜っていた。
丸く小さな背中。
「おばあ、ただいま」
おばあはあたしに背を向けたまま、無愛想に返してきた。
「いー。けーたんなー」
丸まった背中に、あたしは言った。
「おばあのウシラシ、また当たったよ」
西風が吹いて、縁側の風鈴を鳴らす。
空は赤紫色に燃えていて、おぼろ月が浮かんでいた。
「そうかね」
「うん」
じきに夜が訪れる。
夕日色に染まる浜の片隅で、あたしはブイを抱きしめて声を押し殺して泣いた。
もう、あたしの想いが彼に届くことはない。
この涙が枯れたら、準備を始めよう。
サヨナラの準備を、しよう。
そう心に決めて、泣き続けた。
――葵は、おれのいちばん星です、きっと
海斗。
あたし。
海斗のいちばん星に……なりたかった。
「ニャー」
ブイを抱きしめて泣くあたしに、ルリはぴったり寄り添っていてくれた。
あたしが泣き疲れるまで、ずっと。
泣くだけ泣いて、あたしは立ち上がった。
もうじき、夕日が水平線の向こうに沈む。
いつまでもここで泣いているわけにはいかない。
みんな、前に進んでいるのに。
あたしひとり立ち止まっているわけにはいかない。
準備を始めないと。
海斗がくれたお土産とブイをしっかり抱えて煌めく水面を見つめて深呼吸したあたしに、
「ニャー」
どこ行くの? 、と問いたげな瑠璃色の瞳が見つめてくる。
あたしはズヒッと鼻を啜り、ルリに微笑みを落とした。
「バイバイ、ルリ」
「ニャオ」
ルリはひとつ鳴いたあと、向こうにいる大切な家族の元へ走って行った。
「元気でね、ルリ」
あたしは夕暮れ迫るオレンジ色の浜をあとにした。
ガラスのブイをしっかり抱きしめて。
帰ると、おばあが縁側にちょこんと正座して、熱いお茶を啜っていた。
丸く小さな背中。
「おばあ、ただいま」
おばあはあたしに背を向けたまま、無愛想に返してきた。
「いー。けーたんなー」
丸まった背中に、あたしは言った。
「おばあのウシラシ、また当たったよ」
西風が吹いて、縁側の風鈴を鳴らす。
空は赤紫色に燃えていて、おぼろ月が浮かんでいた。
「そうかね」
「うん」
じきに夜が訪れる。



