恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

「ニャ」


「あっ、ごめん。邪魔か、あたし」


すいっと避けると、黒ネコはタタタッと近寄って来て、ルリに寄り添う。


ルリも旦那さんに頬ずりをした。


ルリに、旦那さんに、4匹の子供。


小さな大家族だ。


「良かったね、ルリ」


そっか。


ルリに家族ができたんだ。


幸せそうだ。


海斗も……幸せそうだった。


「ね……ルリ」


ルリに大切な家族ができたように、海斗にも大切な彼女ができたんだって。


「……っ」


心の寂しさが満ち潮のようにゆっくりと押し寄せて来て、あたしは目頭を押さえた。


頬を涙が伝い落ちる。


「ニャー……」


ルリが鳴いた。


それはきっと、あたしが泣いたから。


「ごめ……ごめんね、ルリ」


泣くなんて、失礼だよね。


幸せな家族の前で泣くあたしは、どうかしている。


でも、どうしても堪えきれなくて、あたしは膝を抱きしめて泣いた。


寂しさが夕立雲のように心に広がってあふれた涙は、いつしか本降りの雨のように止まらなくなった。


いつか、こんな日が来ることは心のどこかで分かっていたけど。


現実は辛いものでしかなかった。


泣いても泣いても、涙はぽろぽろこぼれ続けた。


泣くあたしにルリが寄り添い、頬ずりをしてくる。


「何よ……慰めてくれるの……」


泣きながら顔を上げた時、茂みの奥で何かがピカッと光った。


「……何?」


茂みを掻き分けると、そこにあったのはあの日この浜に流れ着いたガラスのブイだった。


ガジュマルの木の根元に埋めよう。


10年後に掘り起こそう。


あの約束を交わした海斗は、もう、どこにもいない。


「これ……こんなとこにあったんだ」


あたしはブイを持ち上げ、抱きしめた。


頬を伝い落ちた涙がブイに落ちて、ガラスの表面をつるりと滑り落ちる。


夕日が背中に突き刺さる。


もう、本当に……海斗は知らない男の人になってしまった。