恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

「あいつ、お土産持ってこっちに向かってるみたいなので。途中まで一緒に行きましょう」


「あ、そうか。そうだよね」


海斗がここにいるってことは、葵ちゃんも帰って来てるんだ。


「一緒に帰って来たの?」


「はい」


「葵ちゃん、元気? あの子モテるでしょ。可愛いもんねー」


「はあ……まあ」


海斗が曖昧に微笑んだ。


「え……?」


その微笑み方に、あたしは妙な違和感を覚えた。


困ったような、でも、やわらかくて優しい微笑み方だった。


何……今の。


何で困った顔したの……。


海斗はズボンのポケットに携帯をしまい、一度うつむいて、そしてゆっくりと顔を上げた。


「陽妃さん」


その目つきに心臓が小さく飛び跳ねる。


優しさがにじみ出た瞳だった。


「あの時の紙、まだありますか?」



「え」



「あ、いや。捨ててくださいって言ったのおれだし、無いならいいんです」


返事をしようとした時、海斗が言った言葉を聞いて、あたしはとっさに嘘をついてしまった。


「あのメッセージ。もしかして、あいつに書いたのかなって思って」


「……」


「葵に書いて渡そうとしてたんじゃないかって思うんです」


嘘を、ついてしまった。


「ごめん。捨てちゃった」


「あ……そうですよね。いや、いいんです」


「ごめんね」


本当は捨ててなんかいない。


捨てるなんて、あたしにはできなかった。


ちゅら玉と一緒に、小さな箱に入れて大切にしまってある。


「気にしないでください」


心臓が不快な音を立てる。


鼓動が急激に早くなった。


心の中にドロドロしたものが流れ込んで来たのを、あたしは確かに感じていた。


手に気持ちの悪い汗を握って、あたしはうつむいた。


「陽妃さん。おれね、分かったんです」


あたしはうつむいたまま小さく返事をした。


「うん」


あたしはおそらく、この後、打ちのめされるんだと思った。


確実に傷つく。


それはなんとなく分かっていた。


こういう時のカンてのはたいがい当たる。


宝くじよりも遥かに高い確率で。