恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

「あつー」


デニムのショートパンツにオレンジ色のノースリーブシャツに、ビーチサンダル。


せめて麦藁帽子くらいかぶってくれば良かった、と後悔した。


午後の強い陽射しが容赦なく肌に突き刺さる。


水際まで行こうかと迷ったけれど、陽射しの暑さには勝てず、あたしはガジュマルの木陰に逃げ込んだ。


おばあの家の縁側には敵わないけれど、日向よりは遥かに涼しい。


波風が頬を撫でつける。


目の前に広がっている海は、今日もクリアブルー色だ。


季節が一周して、また夏、か。


そう言えば。


この島へ移住して来たのもちょうどこの時期だったっけ。


あの時のあたしは失恋したてのほやほやで。


体こそぴんぴんしていたけど、心は捨てられた雑巾みたいにズタボロだった。


でも、あまりにも綺麗なこの海に、この透明な水に心奪われて言葉を失った記憶がある。


あの時は、もう二度と恋なんかって思ったけど。


落ちてしまった。


この浜で会った真っ黒な瞳の、不思議なオーラを放つ年下の男の子に。


恋をしていた。


そっか。


あれからもう1年が経ったんだ。


あっという間に過ぎ去った1年だったけど、思い返せば本当にいろんなことがあった。


「早かったなあ……」


この1年。


あたしはガジュマルの木陰に背中から寝転んだ。


さわさわ揺れる枝葉の隙間から、真っ青な空が見える。


波風が心地よくて、あたしは身をゆだねるようにそっと目を閉じた。


……そういえば。


海斗に初めて会った時も、こうしてこの木の下に寝転がっていたっけ。


なんて綺麗な男の子なんだろう。


ひと目見て、そう思った。


――須藤、陽妃さんよね


真っ黒な瞳はミステリアスで。


まるで黒真珠みたいに輝いていて。


――おれは、比嘉海斗


もしかしたら。


いや、きっとそうだったに違いない。


あの瞬間、あたしはあの瞳に吸い込まれてしまったのかもしれない。


そんな海斗も今はもう高校生になって、那覇に行ってしまった。


海斗が本島に渡って行ってもう4ヶ月。