恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

「いいよーだ。別にー」


脇腹の肉をつまんでくあっとあくびをすると、おばあが言った。


「ずっさらしぃねぇ(だらしないねぇ)。いい若者が予定のねーらんヌか」


「だあってさー」


あたしはむくっと体を起こして、フウと溜息を落とした。


インターハイを決めた里菜は国体もあるとかなんとかで、毎日部活だし。


悠真は観光客のかきいれどきだとかで、毎日タコライス屋の手伝いだし。


4年生になった美波ちゃんは吹奏楽部に入って毎日忙しそうで。


しかも、昨日から3日間の夏合宿中だし。


だから、予定なんてひとつもない。


「みんな忙しそうなんだもん」


縁側の風鈴が風に揺れてリンと音を響かせた。


「陽妃」


「うん?」


「チューやじきに人が来るさ」


「お客さん?」


「いー」


どうやら、今日は予約が入っているらしい。


ユタのおばあのとこには時々、祈祷や占い、悩み相談などの予約が入る。


家族の病気のこと、恋愛、仕事、人間関係で悩める人が相談をしに訪ねて来るのだ。


そして、その時間ばかりは席を外すようにとおばあは望むのだった。


「そっか。おばあも忙しいのか。仕方ないね」


あたしはデニムのショートパンツから携帯を取り出し、時間を確かめた。


15時10分。


「じゃあ、あたし、散歩でもして時間潰して来るよ」


「わっさん」


「ううん。たまには体動かさないと本当にウシになっちゃう。新学期そうそう制服キツイじゃ恥ずかしいし」


よいしょ、と立ち上がったあたしにおばあが言った。


「夕餉までには帰ぇーって来よーさい」


「はーい」


おばあの家を出て、あたしは結局、浜へ繰り出すことにした。


何もないこの島で時間を潰せるとこなんて、浜くらいだ。