恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

「それはそれ。これはこれ」


「けど」


「いいんだって」


なんだか、堀北さんの言っていた意味が分かったような気がする。


律子おばさんのこういうとこなんだろうな。


イケメン、て。


「今日のアレは、さすがの私もカチンときたし。あんたたちの行動にはスカッとさせられたし」


貰ってくれないと逆に困る、そう言われて断るに断れず、


「じゃあ……ありがとうございます」


バイト代を受け取り鞄にしまっていると、


「で。陽妃」


どうかな? 、と律子おばさんが聞いてきた。


「どう? 、って言うと?」


聞き返したあたしをハハハと笑って、律子おばさんは言った。


「いやいや。お姉ちゃん、心配してたからさ」


「お母さん?」


「そりゃあもう。毎晩、毎晩。しつこいくらい電話かけてきたからね、お姉ちゃん。まだ決めてないんでしょう?」


「何を?」


いや、誘って来たというべきなのだろうか。


「卒業後のこと」


「……何でそれ知ってんの?」


「誰に似てこんなに暢気なのかしら! あの子!」


お母さんの口真似をしたあと、くっくっくと笑いを堪える律子おばさんを見て直感したあたしは、


「そういうことだったのかあ」


がっくり肩を落とした。


やられた。


「姉妹で仕組んだんだ。ハメたんだ……ずるい」


この東京行きも、バイトも、全部ふたりに仕組まれていたことに気付いて落胆した。


「結局、律子おばさんはお母さんの手下だったんだ」


「あ、バレたー?」


ハハハ、とひょうきんに笑う律子おばさんを睨む。


「ひどい」


お母さんめ。


帰ったら覚えてなさい。


「でも、お姉ちゃん本当に心配してたよ、陽妃のこと」


将来の夢もなく、ふわふわしているあたしを心配したお母さんは、妹の律子おばさんに夜な夜な相談を持ちかけていたのだ。


そこで、試にうちの店でバイトさせてみる? 、なんてことに話が発展したらしい。


就職に興味を示すかもしれない、と。


「進学は考えてないの?」