「ありがとう」
微笑み返したミカチャンは、なぜか失礼をしてしまったあたしと堀北さんにも「ありがとうございました」を言って笑った。
「スカッとしました。水、もっとかけてくれて良かったのに」
「「えっ」」
あたしと堀北さんは思わず見合ってしまった。
「大好きだったんです。おじいちゃんのこと」
ミカチャンは今年の春先に大好きだったという祖父を病気で亡くしてしまったことを教えてくれた。
「もともと認知症で、施設に入所していたんですけど。脳梗塞を起こしてしまって。でも、その施設の職員の方たちは最後まで本当に良くしてくれて。その時思ったんです。この仕事だ、って」
ミカチャンは介護福祉士の資格を取るため、専門学校に進もうとしているらしい。
それを2年も交際してきた派手好きの彼にダッセーとかキタネーだとか言われて、うんざりしていたそうだ。
「1年生の時はナオくん、あんなふうじゃなかったのに。2年生になってから少しずつ変わっちゃったんです」
でも、2年も交際をしてきて移ってしまっていた情が邪魔をして、なかなか別れを切り出せずにいたらしい。
「いつか。今度こそ素敵な彼氏と一緒に、またパンケーキ食べに来ます。必ず」
そう言って、ミカチャンは晴れ晴れした笑顔で友達と一緒に帰って行った。
あたしと堀北さんのしでかしたことを、律子おばさんは怒らなかった。
「堀北さん」
昼休憩中、あたしは堀北さんに聞いた。
「どうしてですか?」
「何?」
「どうして、水をかけたりしたんですか?」
「ああ、あの事」
「はい。クビになるかも、とか考えなかったんですか?」
すると、堀北さんはコーヒーを啜りながら「考えなかったね」と笑い、休憩室の曇りガラスの向こうにいる律子おばさんのシルエットを見ながら、コソコソと言った。
「オーナー。すっごいイケメンなんだ。そういうとこ」
「イケメン? 律子おばさんが?」
「そ。腹くくってるっていうか。でっかいの、器がね。だからクビにされるとか考えなかった」
それに、と堀北さんはコーヒーを一口啜る。
微笑み返したミカチャンは、なぜか失礼をしてしまったあたしと堀北さんにも「ありがとうございました」を言って笑った。
「スカッとしました。水、もっとかけてくれて良かったのに」
「「えっ」」
あたしと堀北さんは思わず見合ってしまった。
「大好きだったんです。おじいちゃんのこと」
ミカチャンは今年の春先に大好きだったという祖父を病気で亡くしてしまったことを教えてくれた。
「もともと認知症で、施設に入所していたんですけど。脳梗塞を起こしてしまって。でも、その施設の職員の方たちは最後まで本当に良くしてくれて。その時思ったんです。この仕事だ、って」
ミカチャンは介護福祉士の資格を取るため、専門学校に進もうとしているらしい。
それを2年も交際してきた派手好きの彼にダッセーとかキタネーだとか言われて、うんざりしていたそうだ。
「1年生の時はナオくん、あんなふうじゃなかったのに。2年生になってから少しずつ変わっちゃったんです」
でも、2年も交際をしてきて移ってしまっていた情が邪魔をして、なかなか別れを切り出せずにいたらしい。
「いつか。今度こそ素敵な彼氏と一緒に、またパンケーキ食べに来ます。必ず」
そう言って、ミカチャンは晴れ晴れした笑顔で友達と一緒に帰って行った。
あたしと堀北さんのしでかしたことを、律子おばさんは怒らなかった。
「堀北さん」
昼休憩中、あたしは堀北さんに聞いた。
「どうしてですか?」
「何?」
「どうして、水をかけたりしたんですか?」
「ああ、あの事」
「はい。クビになるかも、とか考えなかったんですか?」
すると、堀北さんはコーヒーを啜りながら「考えなかったね」と笑い、休憩室の曇りガラスの向こうにいる律子おばさんのシルエットを見ながら、コソコソと言った。
「オーナー。すっごいイケメンなんだ。そういうとこ」
「イケメン? 律子おばさんが?」
「そ。腹くくってるっていうか。でっかいの、器がね。だからクビにされるとか考えなかった」
それに、と堀北さんはコーヒーを一口啜る。



