恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

「あのっ、堀北さん」


「君はいいから。下がってて」


あたしをかばうようにずいっと前に出て、堀北さんは男に深々と頭を下げた。


「本当に申し訳ございません」


「ごめんで済んだらケーサツいらねーよ。これって死活問題でしょ」


男が挑発的に絡んでくる。


「制服、クリーニングして欲しいんだけど。あとその子、クビにしてよ」


「そうですね」


でも、堀北さんはいつになく冷静で男の挑発をさらりとかわす。


「では、こちらの方でクリーニングさせていただきます」


淡々とした口調で言い、堀北さんはあたしからピッチャーを取り上げた。


「よろしいでしょうか」


すると男はニヤと勝ったと言わんばかりに不敵な笑みを浮かべた。


「そうしてよ。オニーサン、話わかるじゃん」


「かしこまりました」


堀北さんは真摯に微笑み、


「では、失礼いたします」


一礼すると、ピッチャーの上蓋を外して男の頭に水を一気にぶっかけた。


「へっ――」


大声を出しそうになったあたしはとっさに両手で口を塞いだ。


男は濡れるを通り越して、頭からびしょ濡れになってしまった。


サトコチャンとリノチャンが「きゃ」と口を押えて、椅子ごと後ろへ下がる。


ミカチャンは口をあんぐりさせて、堀北さんを見つめていた。


「あれ?」


堀北さんはすっとぼけた声を出して、


「足りなかったかな」


ピッチャーの水が無くなったのを確認するように上下に振った。


最後の一滴が男の鼻の頭にポトと落ちて弾ける。


「てめえ! 何するんだよ!」


ふざけんな、と立ち上がった男が堀北さんの胸ぐらに掴みかかった。


「ああ、すみません。やっぱり足りなかったですか」


堀北さんは言い、目の前にあったグラスを掴むと、その水を男の顔面に思いっきりぶっかけた。