恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

不思議でたまらない。


ミカチャンはこの男のどこが良くて、何に惚れて、付き合っているんだろう。


まあ、そんなの知ったこっちゃないけど。


なんて思いながら水を注ぎ入れたグラスをドンと置いた、次の瞬間。


「介護、介護って。オレには全然わかんねーよ」


男の一言に、あたしの頭の線が1本プツと音を立てて切れてたのを、確かに感じた。


「ジーサンバーサンのシモの世話して何が楽しいんだよ。キッタネーだけじゃん!」


ちょっと、待て。


今……何て言った……このバカ男。


キッタネー、って……言った。


あー。


ピッチャーがどんどん軽くなっていく。


タポタポ、タポタポ。


頭にきて、頭のネジがぶっとんでいた。


目の前で男が餌を請う金魚みたいに口をパクパクさせて固まっていた。


だって。


だってだって。


おばあのことまで完全否定された気がして。


大好きなおばあがキッタネーって言われた気がして。


あたしは何かに操られたように、男の頭にピッチャーの水を流しかけていた。


「……」


どうやら声も出ないらしい。


男は水をかぶりながら完全に硬直してしまった。


ダッセーオトコ。


あたしはトポトポと水を掛けながらクスクス笑った。


「須藤さん」


突然その腕を掴まれて我に返った。


「え? ……ああっ!」


あたしは慌ててピッチャーを上に向け男に謝ろうとしたけれど、


「申し訳――」


「お客様、申し訳ございません」


先に謝ったのは堀北さんだった。


男の顔色が変わった。


「申し訳ございませんじゃねーよ!」


男が堀北さんに食ってかかる。


「どうしてくれんの? 濡れちゃったじゃん! 責任とってくれんのかよ!」


やばい。


どうしよう。


さあっと血の気が引いて行く。