恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

「オトモダチは華やかな仕事目指してんのにさー。こいつときたら介護って。給料安いし、何がいいんだか。ダッセ」


「……」


ミカチャンはうなだれるようにうつむいたまま、顔を上げようとしない。


「どうせなら華やかな職業に就いて、楽しく飯食っていきたいとか思うよねー。普通」


普通って、何。


華やか、とか、ダサい、だとか。


そんなのあるの。


仕事にそんな格付けみたいなもの、あるの。


ただでさえ忙しくてイライラしてるのに。


ただでさえ卒業後のことで悩んでいるのに。


ますますイライラする。


「で、でもさ、ナオくん」


と取り繕うように口を挟んだのはサトコチャンだった。


「ミカが決めた道なんだから。応援してあげようよ。いい職業だと思う。高齢化社会なんだし。ね、リノ」


と助け舟を求めるように、サトコチャンがリノチャンを小突く。


「うん。優しいミカにぴったりだよ」


ミカチャンを心配そうに見つめながら言うふたりを、男は下品にゲタゲタと笑い飛ばした。


「どこが?」


男はパンケーキを口へ運んでもぐもぐしながら「甘っ」と顔を歪めた。


「甘すぎ」


はあっ?


「甘いもんあんま好きじゃないんだよねー、オレ」


そして、グラスの水を一気に飲み干した。


いちいちイラつく男だ。


甘いものに目がないんだよねー、って言ってたの誰だよ。


ころころ変わるひとつひとつの行動言動が、カチンとくる。


そういう男なんだろうな、と思う。


調子が良くて、都合が悪くなると手のひらを返したように態度を変えて。


フラフラ、成り行き任せに生きて来たんだろうなって。


自分に甘い人間なんだろうなって。


「オネーサン、水ちょうだい」


空になったグラスをずいっと差し出して「早くしてよ」と急かして来た男に、あたしは思いっきりわざとらしい笑顔を返し、グラスを受け取った。