恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

のしのし歩いて来たおばあが海斗の頭をぽかと叩く。


「うぬ、ばかもんがぁ。心配させるなぁ」


「ご、ごめん」


「見つからねーらんかったら、オバァ、やーのアンマーに会わせるチラがねーらんかったやさ」


その様子を見つめながら輪に入れずにいると、


「陽妃さん」


後ろから呼ばれて振り向いた。


「葵ちゃん」


「陽妃さん、ありがとう。見付けてくれてありがとう」


「あたしは何も」


首を振ると、葵ちゃんはぺこっと会釈をして、


「海斗!」


とみんなの輪の中に入って行った。


でも、どうしてもあたしはその輪の中に入って行けず、その場から離れ、家に帰った。


こんな気持ちになるなら、海斗と話をしなければ良かったと後悔した。


また心に大きな穴が空いてしまった気がする。


もう、あたしと海斗の接点は無くなってしまったことを、知った。


家に帰ったあたしは真っ直ぐ部屋に入り、ベッドにうつ伏せになったままぼんやり思い出していた。


水平線に沈んでいく、オレンジ色の夕日。


――おれ、やっぱりA高目指すことにしました


――那覇に行きます


そっか。


――すごく迷ったんですけど、一度この島を出て……


そっか……。


――第2の人生じゃないですけど。新しい気持ちで始めようと思って


海斗は前を向いているんだ。


――前に進もうと思います


過去よりも未来を見つめているんだ。


――前に進むためにこの島を出ます


4月から、海斗は居なくなるんだ。


受験に合格したら、那覇に行っちゃうのか。


……会えなくなちゃうんだ。


「陽妃?」


どれくらいの時間ぼんやりしていたのだろう。


ぱっと明りがついて、あたしは我に返った。


「明りも付けないで」


部屋の入り口に仕事から帰って来たお母さんがビニール袋をガサガサさせながら立っていた。