恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

「誰かに宛てたっていうと……手紙、とか?」


あたしが首を傾げると、海斗もうーんと首を傾げる。


「手紙みたいに改まったようなものでもなくて……何かのメッセージ、かなと思うんですけど」


「メッセージ?」


「はい。おそらく……しかも、それ書き掛けっぽいんですよね」


「ふうん」


何て書いてあるんだろう。


「とにかく、後で読んで、笑って下さい」


「え? 笑える内容なの?」


一拍置いたあと、海斗は可笑しそうに吹き出した。


「かなり」


「じゃあ、後で読んでみる」


借りるね、とあたしはスカートのポケットに紙を突っ込んだ。


「いえ、返してもらわなくていいです」


「え、でも」


「どうせ思い出せないと思うので」


そう言って海斗は笑ったけど。


そうかもね、なんて笑い返すこと、あたしにはできなかった。


何か、目に見えない壁を作られた気がして、笑うことができなかった。


「帰りますか」


と海斗が歩き出す。


「あ……うん。みんな心配してると思う」


「謝らなくちゃ」


あたしたちは、不思議なトワイライト色の浜をあとにした。










「あいっ! 帰ぇーって来ちゃん!」


「ふらー! 海斗、どこに行ってたのさ!」


集落に帰ると、あたしと海斗を見るや否や、双子の兄弟が同じ顔で駆け寄って来た。


「「心配かけるなよー、海斗」」


兄は海斗の右肩を、弟は左肩を抱いて、まったくさー、と笑いながら海斗にじゃれついた。


「ごめん。浜に行ってたんだ」


「浜ぁ? 何でか?」


「わんたちも誘えよー」


「ごめんって」


おばあの家から飛び出して来た美波ちゃんが半べそをかきながら、


「にぃにぃー!」


海斗に飛び付いていく。


「ごめん、美波。何も言わないで出て行ってごめんね」


「いいさーもういいさー」


「ごめんね」


飛び付いて行った美波ちゃんを海斗は全身で受け止め、何度も何度も謝った。