恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

じゃれ合うように走り回っていると、ついに海斗が降参した。


「分かりました! 分かりました、見せます」


ハアハア息を弾ませて、


「陽妃さん、走るの早いですね。疲れたっ」


海斗が渋々右手を差し出した。


「まあね。あたし元陸上部だから」


勝った、とそれを手に取ると、


「それを先に言って下さい」


と海斗は旅人が力尽きるようにへなへなと砂の上に座り込んだ。


「海斗、案外体力ないんだね」


何だこれ。


あたしは海斗から受け取ったふたつ折りの紙を空にかざしたり、顔を近づけたりした。


「ねえ、これ何?」


聞くと、海斗は肩を上下させ息を整えながら恥ずかしそうに聞き返してきた。


「おれってませてましたか?」


「へ? そんなことはないと思うけど……なんで?」


「いや、それ見付けてびっくりして」


小さく笑いながら、海斗が立ち上がる。


「ここに来る前、机の引き出し整理してたんです。プリントがごちゃごちゃしていたから。そしたら、右上の引き出しからそれが出て来て」


海斗はちらっとあたしの手に握られている紙を見て、すぐに目を反らした。


「それ、自分が書いたのかと思うと恥ずかしくて。全く覚えがないんですけど。明らかにおれの字なんですよね、それ」


何が書いてあるんだろう、と開いてみる。


確かに数行、何かが書いてあるのは分かる。


でも、夕日が沈んだ辺りは薄暗く、読むに読めない。


「何て書いてあるの、これ……読みにくい」


紙に穴が空いてしまいそうなほどじーっと見つめていると、スッと伸びて来た海斗の手が紙を折りたたんだ。


「最初はポエムかなとか、思ったんですけど」


「ポエム?」


「はあ……でも、何だか違うなーこれ、って思って。誰かに宛てたものじゃないかなって思ったんですけど」


でも、それが分からなくて、と海斗は困ったように笑って、頭を掻いた。