恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

畳の上にコップを置いて、あたしは膝を抱えた。


「ふうー」


自分でも分かるくらい、吐く息が熱い。


浜から帰って来てから体調がおかしい。


具合が悪いわけじゃないけれど、まるで高熱を上げたように体が火照る。


頭が痛いわけでもないのに、船に揺られているようにくらくらする。


膝を抱えると、マキシワンピから潮の香りがした。


綺麗だったなあ、海。


「おれはもう十分踊ったからさあ」


でも、やっぱり綺麗だなあ、海斗。


海斗の目鼻立ちは蛍光灯の下でも独特の雰囲気を放っていた。


この島の人たちとは少し違う、透明でミステリアスなオーラが、なぜかあたしを引きつける。


……綺麗。


まるで、あの透明な海の水面を見てるみたい。


綺麗。


「何か?」


あたしのしつこい視線に気付いたのか、海斗が首を傾げた。


「あっ……ううん。何でも」


海斗って綺麗な顔してるね。


なんて、そんな事言えなかった。


恥ずかしくて、あたしはとっさに目を反らした。


「へんなちゅらさんさ、陽妃は」


隣でクスクスと笑う海斗の声がした。


「ちゅら? 何?」


見ると、海斗はあたしを見て可笑しそうに笑っていた。


「何でもないーっ」


と切れ長の目尻に細いしわを寄せて。


「陽妃よお」


「へっ……あっ、はい」


あたし、なに緊張してんだろう。


海斗は年下なのに。


しかも、まだ中学3年生の男の子に。


なに緊張してるんだろう。