恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

夕日色に染まる一面の中にぽつんとあったそのシルエットが海斗だという事は、すぐに分かった。


「……いた」


凪いだ水面が沈みかけの夕日に染められている光景は、なぜかもの悲しく、あたしの心に迫った。


夕暮れ迫る与那星浜に、彼はいた。


制服のズボンのポケットに両手を突っ込んで、波打ち際に立ち、水面を渡る風に吹かれながら沈む夕日を見つめていた。


半袖のワイシャツの袖がハタハタと揺れている。


良かった……。


ほっと胸を撫で下ろしながらその後ろ姿に近づいて行くと、あたしの気配に気付いた海斗が振り向いた。


「海斗。何してるの?」


近くで顔を合わせたのは久しぶりだった。


少し痩せた海斗は以前にも増して大人びて、ドキドキした。


「あ。ええと……陽妃さん、ですよね?」


隣の、と海斗はどこか自信なさげにあたしの顔を見つめたあと、会釈をした。


また少し背が伸びた海斗に微笑むと、


「正解」


「良かった。隣の家に住んでる人の名前間違えたら失礼ですよね」


と海斗は安堵したように微笑み、また少し広くなった肩幅をすくめた。


あたしは苦笑いした。


隣の家に住んでる人、か……。


「何してたの、ここで」


あたしはゆっくりと近づき、海斗の隣に並んだ。


「また海斗が居なくなったって、みんな探してるよ」


「えっ。すみません。ああ、そっか。おれ、美波に何も言わないで出て来たから……でも」


今日は道が分からなくなったわけじゃない、と海斗は言った。


「今日は部屋の掃除をしていたんです。そしたら、机の引き出しからこの浜の写真が出てきて。来たくなっちゃって」


美波と一緒に来れば良かったかな、そう言ってはにかむ海斗を見て、思う。