恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

「ダメさ! ダメやさ! 陽妃!」


「離して! お願いだから!」


「怪我してしまうさ! 外はひどい風なんだしよ!」


「大丈夫だから! とにかく帰んなきゃ!」


掴まれて、振りほどいて。


また掴まれて、乱気になって振りほどく。


悠真と掴み合いになっていた。


「やー、死ぬ気か!」


「離してったら!」


その際にストラップが鞄に絡まってしまったことにも気付かずに、鞄で悠真を思いっきり叩いてしまった。


「海斗を探すの!」


ブツ、と鈍い音がして、ストラップが千切れてしまった。


ちゅら玉が床に落ちて転がって行く。


「あっ」


床をコロコロ転がって行ったちゅら玉は段差にぶつかって止まり、ぽうっと光を放った。


あたしは慌ててちゅら玉を拾い、両手で握り締めた。


海斗。


「……どこに行っちゃったの」


今、どこに居るの。


この台風の中、どこに居るの。


急に足から力が抜けて、あたしはちゅら玉を握り締めてぺたりと床に座り込んだ。


背後でドアが開く音がした。


「廊下まで声が響いてるよ」


トイレから戻って来た里菜だった。


里菜はドアを閉めて、唖然としている。


「……どうしたのさ、ふたりとも」


床に座り込んでいるあたしと突っ立っている悠真を見て、里菜が首を傾げる。


「何があったのか?」


「里菜!」


気付いたら、あたしは里菜の胸に飛び込んで、泣いていた。


もう、どうすればいいのか分からなかった。


「海斗が、居なくなっちゃったの……」


海斗は絶対に帰って来る。


無事に戻って来る。


里菜の胸で泣きながら、信じて待つことしかできなかった。