恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

「ごめん、悠真」


あたしは携帯を握り締めて、ふらりと立ち上がった。


「あたし、行かなきゃ」


「はあっ? 行くってどこにか?」


悠真が怪訝そうな顔で見てくる。


「帰る。与那星に」


鞄を掴み、ふらふらとドアに向かう。


「はああー? 何寝ぼけたこと言ってるのさ!」


帰れるわけがねーらん、と背中に悠真の声が突き刺さった。


でも、帰んなきゃ。


帰って、海斗を探さないと。


「フェリーは止まってんだしよ! どうやって帰るって言うのさ」


「どうにかして帰んなきゃ!」


帰らなきゃ。


探さなきゃ。


あたしの頭はもう、そのふたつしか考えられなくなっていた。


「待ちなっさー! 帰るなんて絶対に無理だしよ!」


追いかけて来た悠真があたしの肩を掴んでぐいっと引っ張る。


「どうしたのさ、何があった」


あたしは振り向き、悠真の手を振り払った。


「海斗が居なくなったの。まだ見つからないの」


「え」


悠真がぎょっとした。


「夕方出て行ったっきり、帰って来ないんだって!」


声が大きくなって、膝がガクガク震え出した。


「カイトって……ソレくれたやつか?」


と悠真がちゅら玉を指さす。


あたしは大きく頷いた。


「だから探しに行くの」


悠真に背を向け、あたしはドアに向かって駆けだした。


「陽妃!」


追いかけて来た悠真が、ドアノブを掴んだあたしの腕を捕まえる。


「落ち着きなっさー、陽妃」


「離して! 帰るから!」


「バカか!」


「もう! 離してったら!」


あたしは悠真の手を振りほどこうと乱気になった。


帰らなきゃ。


探さなきゃ。


「外は大荒れさ! 今外に出たら危ねーらん!」


「でも、絶対帰る!」


帰るの、与那星島に。