「もう。充電器持って来てないから、電池なくなっちゃう。切るよ?」
と、耳から携帯を離しかけて、
『待って、陽妃』
でもすぐに当て直した。
『落ち着いて聞いてね』
「何?」
ややあって、お母さんが言った。
『海斗くんが居なくなったのよ』
何を言うんだろう、と思った。
「は?」
あまりにもぶっ飛んだことを言うものだから、あたしは笑ってしまった。
「何それ」
居なくなったって、どういうことだろう。
台風で外は嵐なのに。
『さっきね、渡嘉敷さんから電話があったの』
「渡嘉敷って、あの陽気な? 何で?」
『だから……海斗くんが居なくなったって』
お母さんの声は至って真剣で、ふざけていないことだけは分かる。
『夕方ね、突然、美波ちゃんを裏のおばあに預けて“すぐ戻る”って出て行ったっきり、まだ戻って来ていないみたいなのよ』
お母さんの話が次第に具体的になってきて、あたしの頭も理解し始めた。
「夕方って? 何時頃の話なの、それ」
『そこまで詳しくはまだ……でもね』
あたしはごくっと唾を飲み込んだ。
鼓動がゆっくりと速度を上げ始めた。
『今、集落の会長さんたちと消防の方たちが探してくれているみたいなんだけど。ほら、この悪天候でしょう? もう外も暗いし。難航してるみたいなのよ』
停電のせいでエアコンが止まってしまった部屋は蒸し暑く、額に汗が滲む。
暑い。
でも、暑さとは全く関係の無い汗が背中を伝い流れた。
蒸し暑いのに、体からさあっと血の気が引いていった。
『どこに行っちゃったのかしら……海斗くん』
外はますます風が強くなっていた。
窓がガタガタ揺れる。
『陽妃? 陽妃!』
大きな声が鼓膜に響いてハッと我に返る。
「えっ? はい」
『とにかく、また動きがあったら連絡するから』
と、電話は切れた。
携帯を見つめて呆けていると、
「どうかしたんか?」
悠真があたしの肩を叩いた。
「え……?」
「え、じゃねーらん。ぼーっとしてさ」
悠真が心配そうな顔であたしを見ていた。
そうだ。
ぼーっとしてる場合じゃなかった。
と、耳から携帯を離しかけて、
『待って、陽妃』
でもすぐに当て直した。
『落ち着いて聞いてね』
「何?」
ややあって、お母さんが言った。
『海斗くんが居なくなったのよ』
何を言うんだろう、と思った。
「は?」
あまりにもぶっ飛んだことを言うものだから、あたしは笑ってしまった。
「何それ」
居なくなったって、どういうことだろう。
台風で外は嵐なのに。
『さっきね、渡嘉敷さんから電話があったの』
「渡嘉敷って、あの陽気な? 何で?」
『だから……海斗くんが居なくなったって』
お母さんの声は至って真剣で、ふざけていないことだけは分かる。
『夕方ね、突然、美波ちゃんを裏のおばあに預けて“すぐ戻る”って出て行ったっきり、まだ戻って来ていないみたいなのよ』
お母さんの話が次第に具体的になってきて、あたしの頭も理解し始めた。
「夕方って? 何時頃の話なの、それ」
『そこまで詳しくはまだ……でもね』
あたしはごくっと唾を飲み込んだ。
鼓動がゆっくりと速度を上げ始めた。
『今、集落の会長さんたちと消防の方たちが探してくれているみたいなんだけど。ほら、この悪天候でしょう? もう外も暗いし。難航してるみたいなのよ』
停電のせいでエアコンが止まってしまった部屋は蒸し暑く、額に汗が滲む。
暑い。
でも、暑さとは全く関係の無い汗が背中を伝い流れた。
蒸し暑いのに、体からさあっと血の気が引いていった。
『どこに行っちゃったのかしら……海斗くん』
外はますます風が強くなっていた。
窓がガタガタ揺れる。
『陽妃? 陽妃!』
大きな声が鼓膜に響いてハッと我に返る。
「えっ? はい」
『とにかく、また動きがあったら連絡するから』
と、電話は切れた。
携帯を見つめて呆けていると、
「どうかしたんか?」
悠真があたしの肩を叩いた。
「え……?」
「え、じゃねーらん。ぼーっとしてさ」
悠真が心配そうな顔であたしを見ていた。
そうだ。
ぼーっとしてる場合じゃなかった。



