恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

「陽妃やそいつのことがでーじ好きなんだな」


うりうり、と悠真があたしの脇腹を小突いてきた。


「えっ」


「だってそうさー。わんたちが止めても聞かなかったやしが。携帯、携帯ってさー。でーじ好きなんだね」


ふと海斗のことを思い出して、顔がかあっと熱くなった。


「うん……好き。すっごく好き」


会いたいな、海斗に。


すっごーく。


会いたいな。


「いいねーいいさー。まさに青春さー」


と、悠真が背中から寝転んだ。


その時、あたしの手の中で携帯が鳴った。


お母さんからだった。


「もしもし?」


嫌な予感は何ひとつなかった。


これっぽっちも。


だから、ためらいなく出た。


「お母さん?」


『あ……陽妃』


「どうかしたの?」


この台風が去ったらフェリーに乗って、与那星島に帰って、海斗に気持ちを伝える。


好きだって。


あたしが思い描く未来には幸せが詰まっているんだと、信じていた。


『どう? そっち。何も変わりない?』


「うん。あ、でも、こっちも停電してるよ。他は特に何も」


幸せだけが待っているんだと、信じていた。


だから、分からなかった。


その時、与那星島で何が起きていたのかなんて。


……知らなかった。


『そう……良かった』


どうしたんだろう。


なんとなく、お母さんの声にいつもの明るさが感じられない気がする。


「そっちは? まだ停電してるの?」


『うん……まだ復旧してない』


と、お母さんは黙り込んでしまった。


シュッ、と音がして、ぽっと部屋が仄明るくなった。


悠真がロウソクに火を灯したのだ。


里菜が懐中電灯を握り、トイレに行ってくるね、と部屋を出て行った。


「お母さん?」


どうしたの、と聞いてもただ一言「うん」と歯切れの悪い返事が返ってくるだけだ。