恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

「そうさあ。今日は陽妃の家族の歓迎会だよ」


行こう、と海斗があたしの手を取って歩き出す。


まるで、ずっと前から仲良しの友達みたいに。


大我じゃない男の人と手を繋いだのは初めてだった。


でも、全然、嫌じゃなかった。


むしろ、心地良いとさえ思った。


夕方になっても燦々と降り注ぐ太陽。


吸い込む空気すら熱くて。


火照ったあたしの体の熱を、海斗のひんやりした手が奪っていった。


あたしは不思議な気持ちになった。


たった今、初めて会ったばかりなのに。


いつも隣にいるのが当たり前のように、あたしと海斗は手を繋いで白浜を歩いていた。


不思議と全く違和感がない。


海斗はそういう男の子だった。


悲しい時も、嬉しい時も、切なくて逃げ出したい時も。


あたしの世界に静かにそっと寄り添ってくれるような、透明な空気のように。


海斗は不思議な男の子だった。


「あーっ! ずるいばー!」


向こうから、美波ちゃんが物凄い勢いで戻って来る。


そして、あたしの右手を両手で掴んだ。


あたしの体を盾にして、美波ちゃんが海斗を睨む。


「にぃにぃばっかりずるいさー!」


「何があ!」


海斗も負けじと美波ちゃんを睨み返した。


「美波も、ねぇねぇと手え繋ぎたいばあ」


あたしと海斗は目を合わせたあと、同時にぷっと吹き出した。


「わあー。ねぇねぇの手は白いねえ。美波、ねぇねぇ大好きさ」


「ありがとう」


美波ちゃんはそういう女の子だった。