恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

『台風23号は今後、さらに速度を速めて八重山諸島を遠ざかり、宮古諸島を暴風域に巻き込みながら、沖縄本島に接近する見込みです。八重山諸島では吹き返しの風が強まる恐れがあり注意が必要です』


今後の情報に固唾を飲んでいた時だった。


『また、夜遅くには沖縄本島と奄美地方に上陸する恐れがあり、厳重な警戒が必要となります。このことについて沖縄気象台は――』


「えっ」


「はっさ」


「あっ」


突然、アナウンサーの声が途絶える。


電気がフツリと消え、エアコンも止まってしまった。


部屋は暗くなり、少し蒸し暑くなった。


猛烈な雨と風が窓を叩いた。


停電だ。


怒号のような風の音が窓の隙間から悲鳴のように聞こえてくる。


「ろ……ロウソクさ。ロウソク、ロウソク」


暗がりに悠真の声がして、テーブルの上をがさごそする気配がした。


「……これか? あ、これや懐中電灯かね」


「携帯で照らそうか?」


とあたしが携帯で照らそうとした時だった。


「待って。明り付けんで」


と里菜があたしの手首のあたりを掴んだ。


「わあぁー……何か、それ」


「え?」


「陽妃の携帯のストラップさ」


「あ、ああ、これ?」


あたしは握っていた携帯ごとストラップを里菜の気配がある方へ差し出した。


暗い空間がぽうっと青白く明るくなった。


淡く発光する、やさしい光。


「わあー。でーじちゅらさんだねー」


と里菜が顔を近づけて、ちゅら玉を見つめる。


里菜の大きな瞳がちゅら玉の放つ色に染まる。


触ってもいいかね、と里菜に聞かれて、あたしは「うん」と頷いた。


里菜がおっかなびっくりの様子で人差し指でちゅら玉をつんと突いた。


淡い光がふらふら揺れた。


「かわいらしいストラップ付けてるなとは思っていたやしが。光るとは思ってなかったからさ」


電池かね、と里菜は興味深そうに瞳をくるくるさせた。