恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

『また、今夜は大潮に当たるため本島南部地方と奄美地方では、深夜から朝にかけて高潮に警戒が必要です』


車道の真ん中でステーションワゴン車が横転している映像に、


「わわ、車がひっくり返ってる」


「今回や被害が凄そうさ」


あたしと里菜は手を休めて、テレビに見入ってしまった。


『繰り返します。非常に強い台風23号は……』


窓がガタガタ音を立てる。


時折、激しく雨が窓ガラスを打ち付ける。


「くりやぁーかなり近づいて来ちゃんね。でーじ風さー」


里菜が窓の方を見てひえーと背中を丸めた。


「なにー怖いのかー、里菜よー」


キシシ、と小馬鹿にしたように笑った悠真をギロリと睨んで、里菜は呆れたと言わんばかりの溜息を吐いた。


「どこまでアホなのさ……前歯にネギが貼りついてるしよー」


かっこわる、と笑った里菜を悠真が睨み返す。


「バカか、里菜。わんや与那星一のかっこいいイキガやんど!」


「自分で言うかね、アホ」


「いいさー教えてやるさー」


と悠真は箸を置き、偉そうに腕組みをした。


「だってさ、この前さ、アラシのマツジュンに似ちょる言われたやさ」


ブハッ、と里菜が吹き出す。


「どこがさ! マツジュンに失礼だしよ!」


「フラー(ばか)なに言うか。その前やショウくんさ。その前の前やニノだば。昨日やサトシさ。次や絶対、アイバチャンて言われるさ!」


わんやアラシに入れるんじゃないかね、と自信満々に言った悠真の頭を、里菜がべしっと叩きながらゲラゲラ笑った。


「笑わさんけーよ、悠真よー。誰か? そんなこと言ったんや誰さ!」


里菜もよく知ってる人さー、と悠真がニヤリと口角を上げた。


「誰か、誰か?」


「それやなぁー」


と悠真がテーブルに身を乗り出した。