恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

その衝撃で悠真が前頭部を廊下にゴンと打ち付ける。


「あっがー! 殴るなって言ってるばーもー。わんやぁお前らのことがでーじ心配でさー」


「人の心配より自分の心配しれーよーもぉー!」


ふたりとも……。


追いかけて来てくれたんだ。


こんなにびしょ濡れになって。


追いかけて来てくれたんだ……。


「……大丈夫?」


ぎゃんぎゃん言い合うふたりに声を掛けると、ふたりはあたしを見て、


「「なんくるないさー」」


と声を重ねてにーっと笑い、同時に親指を立てるのだった。


そんなふたりを見て、不意に、言葉が漏れた。


「なんか……仲良し」


ふふっと吹き出してしまったあたしを見て、ふたりがまた言い争いを始める。


「どこがかー! 里菜が真似しただけなんだしよー!」


「はあー? 真似しちゃんら悠真の方だしよ!」


「はあー? ぬー?」


「ぬー」


ぎゃんぎゃん言い争う声が廊下に響き渡る。


「くらぁー! 誰かー!」


と、そこに現れたのは担任の仲里先生で、


「何か、お前ら。まだ残っていたんか」


呆れ顔であたしたちを指さした。


「与那星組か。早く帰ぇーれー。かじふちが来るば、フェリー止まってなおすよ」


ドキッとした。


そういえば……ふぇ、フェリー……。


「や、やさ。今……何時か?」


右の口角を引きつらせ、悠真が聞いてきた。


あたしは携帯を開いて、にへっ、と笑った。


「あの……12時……5分」


一瞬、空気が氷点下20度くらい冷たく凍りついた。


里菜ががくっと肩を落とした直後、なんでかあーっ! 、と悠真の雄叫びが廊下にぐわんぐわん響いたのは、言うまでもない。


フェリーに間に合わなかった。