恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

学校まで、走れば10分くらいで行けるんじゃないかと思う。


行きと戻りで合わせて約20分。


中学の時は陸上部だったし。


万年補欠だったけど、陸上部だったんだし。


まだ、足には自信がある。


行けるんじゃないかと思う。


でも、万が一、最終に乗り損ねたら……。


あたしは確実に、帰宅難民だ。


石垣島に親戚はいないし。


路頭に迷うのと一緒だ。


「今日は諦めるしかねーらん、陽妃」


ね、と里菜があたしの肩を叩いた。


「……うん」


諦めるしかない。


それは分かってるんだけど。


分かるんだけど。


「でも、やっぱり」


あたしがすくっと立ち上がると、


「陽妃?」


里菜もすたっと立ち上がり、あたしの腕をつかんだ。


「ごめん、里菜。あたし、やっぱり学校に行って来る」


「なに考えてるのさ! 時間までに戻れなかったらどーうするんかみ?」


「走るから。すぐ戻って来るから」


あたし陸上部だったんだ、とあたしは里菜に鞄を預けて、人波に逆らって駆けだした。


「陽妃ー! 間に合わなかったらどうするのさー!」


里菜の声には振り向かず、あたしは人波を掻き分けた。


ターミナルの出入り口付近で入って来た人と正面衝突しそうになった時、


「危ねーらん!」


背後から腕を引っ張られ、体がぐんと後ろへ傾いた。


「え?」


振り向くと、悠真だった。


「どこに行くつもりか?」


「陽妃! 待ちなっさー」


里菜も後から追いつき、あたしの鞄を胸に抱き締めて心配そうに見て来た。


「どこに行くのさ」


あたしの腕をさらに強く掴んで、悠真が右眉を逆への字にした。


「が、学校」


「はあー? 何でかあー? 帰ぇーれなくなるぜ」


ターミナルに悠真の大きな声が響く。


「大丈夫。すぐ戻ってくるから。学校まで近いし、まだ雨降ってないし」


「やめとけー無理さー」


「でも、携帯忘れちゃって」


ケータイー? 、と悠真が呆れ顔になった。