恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

あたしはその場にしゃがみ込み、今度は鞄の中をごそごそと引っ掻き回した。


メイクポーチ。


手帳。


お弁当。


財布。


フェリーの通学定期。


あっ。


……ペンケース。


やっぱりない。


「何ね? 陽妃。どうしたのさ」


里菜もしゃがみ込み、鞄の中を覗き込む。


「何かねーらんかみ? 定期か?」


「ううん、違う、ま、待って」


あたしはもう一度スカートのポケットに手を突っ込んでごそごそしてみた。


……ない。


うなじのあたりからさあーっと血の気が引いて行くのが分かる。


「え……っと、ターミナル。学校……下駄箱……階段……トイレ……」


今日の行動を頭の中で逆再生してみる。


「……教室……あっ!」


机だ。


2時間目の休み時間だ。


照屋くんのラジオで台風情報を聞いた時だ。


机に突っ込んでそのまま下校になって、バタバタしてたから。


忘れて来ちゃった。


「どうしよう、里菜」


「なに、何さ。どうしたのさ」


どうしたもこうしたも。


「携帯、忘れて来ちゃったあ」


「どこによ!」


「教室。机の中」


「えーもう一回よく探してみなっさー」


どれ、と里菜があたしの鞄に手を突っ込んでごそごそかき回す。


けれど、ないものはないのだ。


「ねーらん」


里菜は自分の携帯で時間を確かめると、


「今さ、25分になるよ。学校近いし戻れんこともないやしが。もし万が一、最終に乗り損ねたら」


今日は帰ぇーれねーらん、と説得するようにあたしの肩を叩いた。


「携帯も大事やしが。最終に乗り損ねたらそれこそ大変さ」


「そ……そうだよね」


「1日2日、我慢するしかねーらん」


「うん……そうだよね」


でも……。