校舎を出て、里菜が空を見上げる。
「曇ってきたねー」
「うん」
ビュッ、と後ろから吹いた生ぬるい風でめくり上がりそうになったスカートを慌てて押える。
「うわっ……風が出て来た」
「これからもっと強くなってくるさ。早く行こうね」
「そうだね」
あたしと里菜が学校を出た時、時刻は確か11時前だった。
大型の台風が予想よりも速い速度で接近しているらしい。
さっき、担任の仲里先生が言っていた。
午後からの授業は無くなり、全校生徒は直ちに帰路につくようにと告げられた。
空は分刻みに灰色の雲に覆われていく。
バス停やターミナルに向かって生徒たちがゾロゾロと歩いて行く。
里菜と一緒に離島ターミナルに向かって歩いているうちに、風も強くなってきた。
追い風に背中をぐいぐい押されながら、ターミナルに着いた時は11時10分だった。
ターミナルの広々とした待合ロビーは観光客や学生、仕事を早く切り上げたと思われる大人たちでいつもより混雑していた。
旅行代理店やお土産ショップもこの台風の影響で早めに閉店するらしい。
店じまいの支度をしていた。
「小浜島よりご到着のお客様で、これより石垣空港へ向かう方ー」
ツアーガイドだろうか。
制服を着た綺麗な女性がプラカードを高く掲げている。
石垣島を出ようとしている観光客が、そちらにどどどっと流れて行く。
「本日最終12時出航の便に御搭乗予定のお客様、お急ぎくださーい。ターミナル前より石垣空港までの臨時バスが出ておりまーす」
こんなに混雑しているターミナルは初めてで、オロオロしていると人とぶつかってしまった。
「あっ、すみません」
「あ、いえ、こちらこそ。大丈夫ですか」
大きなスーツケースに、標準語。
観光客らしい。
「ごめんね」
とその人は慌てた様子ですたすたと行ってしまった。
すごく混んでる。
里菜とはぐれないようにしなきゃ。



