恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

大きく大きく両手を振る海斗の口が動いている。


繰り返し、繰り返し、動く。


「……ま?」


最初は早く、


まってるね



次第に、ゆっくり、大きく、動いた。





まっ て る ね





あたしは窓越しに大きく手を振り返した。


まさか、そんなことになってしまうなんて、これっぽっちも思わずに。


海斗が小さくなっても、手を振り続けた。


帰って来たら、伝えよう。


好きだよって、素直に伝えるんだ。


あたしは、海斗が待ってくれていると信じて疑わなかった。


信じていた。


ふたりでタイムカプセルを埋めに行くことも。


そして、それを10年後にふたりで掘り出すことも。


互いに宛てた手紙を見て、笑いあえる未来を。


信じて、疑わなかった。












学校に着いた頃、上空は分厚い雲に覆われ始めて、1時間目が終わった頃には風が出始めた。


2時間目が終わり休み時間になった時、携帯のウェブで台風情報を見ようとしていると、隣の席の照屋くんが持参したという携帯ラジオを机に乗せた。


「須藤さんも聞く?」


「なにを?」


「かじふち情報さ。携帯より早いし詳しいよ」


「いいの?」


「いいよ」


「ありがとう」


あたしは開きかけていたウェブをキャンセルして、携帯を机の中に放り込んだ。


『大型で非常に強い台風23号は次第にその勢力を増し、1時間におよそ50キロの速さで北北東へ進んでいます』


照屋くんの携帯ラジオから台風情報が流れ始めると、


「照屋ぁ、いいもん持って来たねー」


「わんにも聞かせてー」


「今、どこまで来ちゃんかねぇー」


クラスメイトたちがわらわらと集まって来て、照屋くんとあたしの席を中心に人だかりの輪ができた。


『中心の気圧は964ヘクトパスカル、中心付近の最大風速は47メートルで、今夜には島内全域が暴風雨域に入る恐れがあり、厳重な警戒が必要となります』