恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

「あっ、あの。バス来たから」


と乗り込もうとしたあたしの手を海斗が掴んで引き止めた。


振り向くと、海斗は不安げな顔で眉頭を寄せていた。


「ほんとにちゃんと帰ぇーって来るかね?」


なんだか……今日の海斗は変だ。


「当たり前じゃん。どうしたの、へんだよ、海斗」


首を傾げると、海斗はあたしの手をぱっと離して苦笑いした。


「そうだよね。やしがさ、なんだかもう会えない気がしてさ」


「なに言ってんの……」


何でそんなことを言うのか、不思議だった。


「学校終わったら帰ってくるから」


家、あそこだし、と集落の方を指さすと、海斗がふっと笑顔になった。


「やさ。そうだよね」


「うん」


「じゃあさ、おれ、待ってるね。陽妃が帰って来るの待ってるからさ」


ちゃんと話をしよう、と海斗は言った。


あたしは頷いた。


「ねぇねぇ、乗らねーらんのかみ?」


運転手のおじさんに言われて、


「あ、乗ります!」


あたしは慌ててステップに飛び乗った。


そして、振り向き、海斗に言った。


「あたしも、海斗に話したいことがあるの」


海斗の瞳が真っ黒に輝く。


「だから、待ってて。それで、一緒にタイムカプセル埋めに行こう」


もう、伝えよう。


もういい加減、伝えよう。


すれ違ってばかりいないで。


「あたしの気持ち、聞いてくれる?」


海斗が好きだって。


伝えよう。


プシュウとエアーが抜ける音がして、ドアが閉まる。


ドア越しに海斗が微笑みながら、両手で大きな輪を作った。


海斗の口が動く。


「え? 何?」


海斗が何かを言っている。


あたしはガラスに貼りついて、海斗の口元を見つめた。


バスが動き出した。


あたしは慌てて後部座席に向かい、窓ガラスに両手をついた。


やっぱり何か言ってる。