恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

「おれさ、もう一度、陽妃とちゃんと話したくてさ」


「え?」


反射的にぱっと顔を上げると、海斗は真剣な面持ちで背筋をしゃきっと正した。



「陽妃とぎくしゃくしたくないからさ。ちゃんとしようと思って……もう、ちゃんとしようと思って」


やさからさ、と必死に何かを訴えるように話す海斗を見て、あたしは思わず笑ってしまった。


「んなっ、何か!」


人が真剣に話してるのにさ! 、と顔を真っ赤にしてむっとする海斗。


「だって」


あたしはクスクス笑いながら、海斗のワイシャツを指さした。


「一段ずつズレてるよ、ボタン」


「えっ!」


歪んだワイシャツを見て、


「はっさ! 台無しさー!」


とあたふたしながらボタンを外し、かけ直す。


あわてて追いかけて来てくれたのかな。


そう思うと、愛しくなった。


海斗はいつもそうだ。


その独特な透明感で、あたしの心を穏やかにしてくれる。


海斗がそこに居るだけで、なぜだか心が浄化されていく。


「エーエー! 何でか? うまく掛けれねーらん!」


慌てているのかわたわたしている海斗のワイシャツに手を伸ばし、


「ちょとかして」


あたしは笑いながらボタンをかけた。


首元のボタンをかけようとした時、


「は、陽妃」


低い声が降って来て、手首を掴まれた。


ひんやり冷たい、海斗の手。


顔を上げると目が合って、心臓が飛び跳ねた。


「おれや陽妃が好きやさ。もう、どうにもならん」


あっ、と思った時にはもう、海斗の唇が額にそっと触れていた。


かあっと顔が熱くなった。


「ちょ、ちょっと、バカ」


朝から何すんの、と海斗の胸を軽く押して離れ、額を手で押える。


その時、タイミングが良いのか悪いのかバスが到着して、ドアが開いた。