恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

遠回りになっても、引き返して追いかければまた交われる可能性があるんやさから。


すれ違うこともできなくなったらもうダメさ。


一方通行になってしまったら、どうにもならねーらんしよ。


「……やさから、陽妃やわんみたいにららないでね」


「里菜みたいに、って?」


「一方通行の恋ほど苦さんもんはないさ。もう追いかけるしかねーらんもん。引き返すことも、先回りして待ち伏せることもできねーらん」


背中を見つめるだけの恋や辛いだけさ、と里菜は言った。


結局、その日、悠真は学校に来なかった。


帰るとやっぱり海斗は居なくて、久高島から帰って来たおばあと、美波ちゃんと3人の夕餉だった。


その翌日、悠真が登校して来たけれど、里菜とは一言も口をきかず、ふたりは目を合わせようともしなかった。


そして、土曜日を迎えた。


その日の朝は目覚ましのアラームが鳴る前に、その音で目が覚めてしまった。


船の帆が強い風ではためくような音だった。


カーテンが大きく膨らみ、湿った温い風が部屋に入ってきて、机に広げっぱなしにしていたノートをバタバタめくった。


ベットを出て、カーテンを束ねながら窓の外を見る。


青空が広がっていた。


でも、台風が近づいている。


雲の流れが異様に早い。


あたしは窓をピシャリと閉め、ノートを鞄に突っ込んだ。










『非常に強い台風23号は午前5時現在沖ノ鳥島沖の海上にあって、1時間におよそ40キロの速さで北東へ進んでいます』


制服に着替えてリビングに行くと「あらーまあー」と難しい顔のお母さんがテレビにかじりついていた。


台風情報が流れている。


『中心気圧は963ヘクトパスカル、中心付近の最大風速は35メートルで、最大瞬間風速は50メートル以上の暴風が予想されます』


台風は予想よりも急激に速度を上げ、沖縄に接近しているらしい。