恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

あたしの予感は的中した。


海斗は比嘉さんの息子だったのだ。


「当たり! 裏のおばあがさ、見かけんやまとんちゅが浜に行ったから、迎えに行って来いーって」


さっきすれ違ったでしょ、そう言って、海斗はまたケホッと咳払いをした。


風邪でも引いてるのかな。


「あの、海斗くん」


「ああーあ、海斗でいいさあ」


「……じゃあ、海斗」


「何か?」


「裏のおばあ、って。もしかして、こう、腰が曲がった、すっごく無愛想なおばあちゃんのこと?」


あたしが腰を曲げてジェスチャーすると、海斗は無邪気に笑った。


「そうさ! おばあはいーつも無愛想。気にすることないからねー」


海斗の笑顔は眩しいほどに輝いていて、海の水よりももっと透き通っていた。


「ねぇねぇ」


と美波ちゃんがあたしの背中を叩く。


「もうすぐ夕餉(ゆうげ)だよ。美波たちと一緒に帰ろう」


早くうー、と美波ちゃんが白浜を一気に駆け出した。


「え? ゆうげ、って?」


意味が分からなくて首を傾げていると、さり気なく絶妙のタイミングで海斗が教えてくれた。


「夕餉は、夕ご飯のことさあ」


「そうなんだ。ごめんね、あたしまだこの島の言葉、良く分からなくて」

「平気さあ。すーぐ分かるようになるからさあ。ちなみに、ねぇねぇはお姉さん、にぃにぃはお兄さんの事だが」


「そうなの。ありがとう」


海斗が照れくさそうに笑った。


「陽妃、あのさあ」