「いないから、おばあ……だから、あの」
あたしの動揺が伝わってしまったのだろうか。
それまで大人しかったルリが腕の中でもがくようにモゾモゾと動き出す。
「にっ」
「あっ、こらっ」
「ニャー」
ルリはあたしを拒否するように腕の中で小さな体をよじらせ、しなやかにひらりと地面に着地すると、
「ニッ」
素っ気ない声を出してどこかへ行ってしまった。
「陽妃」
呼ばれてとっさに返した声は、
「そうそう、あのねっ」
見事に裏返る。
「美波ちゃん、今、うちに来てるから。今、眠って――」
「陽妃」
「あっ! でも、ふたりで作ったの」
「あのさ、はる――」
「チャーハン! ……作ったの」
わざとらしく大きく出した声は語尾がグダグダになってしまった。
喉がカラカラに渇く。
舌が上あごに貼りついてしまいそうだ。
「美波ちゃんが教えてくれて。だから……その……上手にできたの……ほんとに」
でも、しゃべり続けていないと。
「か、海斗、お腹へったでしょ。ちゃんと寄せてあるから……海斗のぶん」
動揺丸出しでも、しどろもどろでも、グダグダでも。
もう、何でもいいから。
「あるから……ちゃんと。あの……海斗のぶん……寄せてあるよ」
しゃべり続けていないと、あたし。
たぶん、きっと。
泣いてしまう。
「だから……あの……食べる? そりゃ、おばあの料理に比べたらアレなんだけ――」
「陽妃」
パシャ、と跳ねる水の音がして、海斗が近づいて来る。
「見たんか」
真っ黒な瞳が、あたしの体の自由を奪う。
「見たんか。今の」
一歩、また、一歩。
まるであたしを試すようにゆっくりと、でも、確実に。
海斗の気配が迫って来る。
あたしの動揺が伝わってしまったのだろうか。
それまで大人しかったルリが腕の中でもがくようにモゾモゾと動き出す。
「にっ」
「あっ、こらっ」
「ニャー」
ルリはあたしを拒否するように腕の中で小さな体をよじらせ、しなやかにひらりと地面に着地すると、
「ニッ」
素っ気ない声を出してどこかへ行ってしまった。
「陽妃」
呼ばれてとっさに返した声は、
「そうそう、あのねっ」
見事に裏返る。
「美波ちゃん、今、うちに来てるから。今、眠って――」
「陽妃」
「あっ! でも、ふたりで作ったの」
「あのさ、はる――」
「チャーハン! ……作ったの」
わざとらしく大きく出した声は語尾がグダグダになってしまった。
喉がカラカラに渇く。
舌が上あごに貼りついてしまいそうだ。
「美波ちゃんが教えてくれて。だから……その……上手にできたの……ほんとに」
でも、しゃべり続けていないと。
「か、海斗、お腹へったでしょ。ちゃんと寄せてあるから……海斗のぶん」
動揺丸出しでも、しどろもどろでも、グダグダでも。
もう、何でもいいから。
「あるから……ちゃんと。あの……海斗のぶん……寄せてあるよ」
しゃべり続けていないと、あたし。
たぶん、きっと。
泣いてしまう。
「だから……あの……食べる? そりゃ、おばあの料理に比べたらアレなんだけ――」
「陽妃」
パシャ、と跳ねる水の音がして、海斗が近づいて来る。
「見たんか」
真っ黒な瞳が、あたしの体の自由を奪う。
「見たんか。今の」
一歩、また、一歩。
まるであたしを試すようにゆっくりと、でも、確実に。
海斗の気配が迫って来る。



