恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

夕餉を終えてテレビを観始めて間もなく、美波ちゃんはくんくんと寝息を立ててソファーで眠ってしまった。


あたしに料理を教えて疲れてしまったのだろう。


あたしは美波ちゃんの体に夏掛けをかけて、キッチンで洗い物を始めた。


ついに雨が降り出したのは、20時を過ぎて間もなくのことだった。


網戸からシトシト、雨音が入ってきた。


久しぶりの雨だ。


静かに降り出した雨は、洗いものが終わった頃にまた少し強くなった。


時計を見ると、もう20時半近い。


海斗、まだ帰って来ないのかな。


遅いな。


傘持って行ってないだろうから、濡れちゃうだろうな。


おばあが居ないことも、美波ちゃんがうちに来ていることも知らないだろうし。


海斗も携帯を持っていたらな、と思う。


こういう時、連絡とれるのに。


「……あ」


ふと、思い出したのは、最近毎晩訪れる小さな訪問者のことだった。


まだ小さくて、綺麗な瞳を持つ猫。


ルリ。


「来てるかな」


今度は妙にルリのことが気がかりで、


「すぐ戻るからいいよね」


美波ちゃんが眠っているのを確認して、海斗の分をお皿に取り寄せ、残ったチャーハンと卵スープを混ぜたネコまんまを持って、傘もささずに裏のおばあの家に向かった。


だって、本当にすぐ帰るつもりだったから。


本当に、ネコまんまをあげたらすぐに。


「あっ、やっぱり来てたの」


あたしの気配を察したのか、おばあの家の玄関先で雨宿りをしていたルリが「にーい」と鳴いて飛び付いてきた。


「ごめんごめん。今日ね、おばあ出掛けてるんだ。遅くなってごめんね」


コト、とネコまんまを入れた容器を差し出すと、ルリは待ってましたとばかりにがっつき始めた。


「うまい?」


夢中になって食べている。


「それね、美波ちゃんと一緒に作ったの」


ルリはあたしを無視して、長いしっぽをうねうねくねらせて、ひたすら食べ続ける。


「じゃあ、美波ちゃんが心配だから帰るね。ルリも食べたら帰んなね」


と、立ち上がり駆け出そうとした時だった。