恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

「足が生えとるね。いつまで島におれるか?」


「え……ちょっと。あたし、人魚姫じゃないよ」


困ったなあ。


可愛いけど、ちょっと変な女の子に捕まっちゃった。


女の子はぷっくりとほっぺたを膨らませた。


「えーっ、ウソさあ。裏のおばあが言っとったもん。でーじちゅらさんがさ、浜におるうーて、言ってたさあー」


「ちょっと待って。ごめんね。あたし、この島の人じゃなくて、言葉が」


しどろもどろのあたしなんかお構いなしに、女の子ははしゃぎ続けた。


「みなみぃさ、おばあに聞いたんよ。そんなにちゅらさんなら人魚姫さんかねーって。そうかもしれんねーって、おばあが言ったよお」


きれいなドレスばあー、そう言って、女の子はあたしのマキシワンピにそーっと触れた。


「わあ……ちゅらさいーびん」


その時、突風のような強い風が吹いて、


「あっ」


麦藁帽子が飛んでしまった。


白い砂の上をコロコロ転がって行く、麦藁帽子。


「やだ、飛んじゃった」


その麦藁帽子をひょいと拾い上げて、


「みなみぃ、何言ってるばあー」


と笑った彼を見て、あたしの心臓は一瞬だけ、一時停止した。


「その人は、人魚姫じゃないさー」