幸せになるために人は人を好きになるのに。


どうしてこんなに、切ないんだろう。








瑠璃色の大きな襟のセーラー服に、スカート。


紺色のハイソックス。


真新しい制服。


朝一のフェリーに乗るための、苦手な早起き。


止まらないあくび。


朝から照り付けるきつい陽射し。


編入してからの1週間は慣れない習慣と環境への緊張と不安の連続だった。


不幸中の幸いなんて言ったら大袈裟かもしれないけど。


里菜と同じクラスになれた事は本当に救いだった。


「里菜! 陽妃!」


朝日が射し込む賑やかな教室の窓際席から、


「おはよう」


と、教室に入ったあたしたちに手を振ってきたのは、新垣 早穂(あらがき さほ)だった。


「「おはよう」」


「ラッキーだしよ。1時間目の数学な、自習やしが」


そう言ってピースをして笑った彼女は、1年の時から里菜と同じクラスならしい。


黒髪のボブヘアーのぱっつん前髪がチャームポイントで、小柄なその容姿は小動物のような可愛らしさだ。


クラスメイトたちはみんな仲良しで、男子も女子もみんな気さくで明るく、意外にも早くなじむことができた。


順風満帆で怖いくらいに楽しい学校生活が送れている。


早穂は石垣島出身の地元民で、ブラスバンド部に所属しトランペットを担当している。


みんなからは、さっちん、と呼ばれて人気者だ。


そして、バスケ部に彼氏がいる、らしい。


「あーい、陽妃。今日の髪型かわいいね。おだんごさん」


早穂の机に椅子を持ち寄り、


「ありがと。今朝ちょっと時間あって暑いし束ねてみたんだ。早穂も前髪決まってるね」


「なにー! わんは? 早穂、わんのことやぁ褒めてくれねーらんのかね」


「ウーウー、里菜がいちばんさ! 里菜がいちばん、ちゅらかーぎ! ねっ、陽妃」


「そうそう」


3人でいつものようにおしゃべりをしていた時だった。