恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

「それでもうちの子に変わりはないよって、父さんも母さんも言ってくれたよ。やしが、周りが普通でもね、おれがね、ダメやたん」


――おれのことやほっといてくれ!


「腐ってさ。壁作ってさ。誰とも関わりたくなくてさ。毎日、毎日、この浜にばかりおった」


潮が満ちてきたらしい。


腰のあたりだった水位は上がり、海水はみぞおちまでになっていた。


――くらぁ、海斗。いちまで腐っているんかぁ


「腐って孤立しとったおれに声を掛けてくれたんが、裏のおばあやたん」


――話があいっさー(あるよ)。大切な話だしよ。見せたいもんがあんのやっさー


――……何か、それや


――ついて来なっさぁー


「捨てられたとばかり思っていたやしが……違っとった。捨てられたんやなくてね。仕方ねーらんことやたんさ」


「仕方ない? どういうこと?」


聞くと、海斗がこくと頷いた。


「おばあがさ、全部教えてくれた」


――海斗。やーを産んでくれたあんまー(お母さん)を恨んじゃいけねーらんよ。仕方がねーらんたんさ。誰も何も、悪こーねーん(悪くない)


「おばあが見せてくれた物や、2通の手紙やたん。ひとつは封筒にも入っとらん裸んぼうのやつでね……」