恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

「この浜のガジュマルの木の下におった生まれて間もない赤子のおれを拾ってくれたんが、裏のおばあやたん」


もしかしたら、おばあはそうなる事を知っていたのかもしれない。


その時、集落には結婚して6年になる、子宝に恵まれない比嘉夫婦がいて、養子として赤ちゃんを引き取り育てる事になったらしい。


「おれさ。少しも疑ってなかったからね。この島で生まれて、この島で育ったんやってね」


やしがね、と海斗が声をワントーン落として話し続ける。


「やっぱりさ。大きくなってくるとさ、物事を理解する力が発達して来よるわけさ。嫌でも分かってくるわけさ。要らん勘が働きよるわけさ」


――海斗。やー、日に焼けねーらんか


――やーは何でそんなに色がシルーんみ?


「友達から言われてさ。確かに何でか、って、おれも不思議に思ってしまうわけさ」


――やー、島の子じゃねーらんみたいさぁ


「それから美波が生まれて、気付いたんやっさ」


――美波ちゃんやスー(お父さん)にそっくりだねぇ


――あんまー(お母さん)にも似ちょるさ


――みー(目)がぱっちりしはる


「何でか。何でおれは父さんにも母さんにも似とらんのか。何でおれと美波は似ちょらんのか。おれや、一体誰に似たんか……って」


ある日、海斗は意を決し、勇気を振り絞って両親に聞いたそうだ。


――おれやぁ……じゅんにふたりの子供なんかみ?


「拾われて来ちゃん子やしが知ったんや、そん時やたんよ」


――わっさんね(ごめんね)、海斗。隠していたわけじゃないよ


――やーがもう少し大人になったら、話そうと思っていたんやっさー


「そん時やまだ小4で受け入りゆんことができないったしさ。どうすればいいのかも分からねーらんたん。綺麗ごと並べられてもね。結局、おれやぁ捨てられた子なんや、って。自暴自棄になったよね」


溜息交じりに話し続ける海斗の隣で、あたしは静かに、本当にゆっくりと瞬きをした。