恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

真っ黒な海に投げ込まれた、ひとすじの月光。


「ムーンロードって言うんでしょ?」


言ったあたしの隣で、海斗は煌めきながら伸びるその道を指さし、小さく笑った。


「一度、この目で見てみたくてさ、来てみたんやっさぁ。しちゃんら、予想以上にちゅらさんでさ。渡ってみたくなってね……気付いたら海に入っとった」


渡れるわけないんだけどさ、そう言って肩をすくめた海斗が、溜息を落とした。


少しの沈黙のあと、


「この道や、どこまで続いとるんかね」


海斗が呟くように、言った。


「北海道まで繋がってるんかね」


「北海道?」


「やさ。例えばさ。札幌あたりまで、とか」


「札幌?」


「やさやさ。雪が降る街。陽妃、行ったことあるかね」


「ううん……ない、けど」


「どんな街なんだろうねぇ」


そう言った海斗の横顔を見ていたら、なんだか急に切なくなった。


なんで急に「北海道」なんて言い出すんだろう。


なんでそんなに、寂しそうな目でムーンロードを見つめているんだろう。


海斗の口から衝撃の事実が告げられたのは、一瞬、潮騒が途切れた直後だった。


「札幌や……おれが生まれた街やっさー」


その瞬間、あたしはとっさにその横顔から目を反らした。


「陽妃、気付いていたんやっしー?」


あたしは声には出さず、小さく頷きを返した。


気付いていた。


もしかしたら、といつも思っていた。


海斗は、この島の子じゃないんじゃないか、って。


「そうだよ。おれや、この島の人間じゃねーらん。札幌で生まれてしぐ(すぐ)に、この島に連れて来られたんやっさー」


ぜんぜん覚えてねーらんやしがね、と明るい口調で言う海斗を見ることはできなかった。


あたしはうつむいたまま、右手で胸元を押えた。


ズキ、と胸が軋んだ。