恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

変な話かもしれない。


ああ、やっと、会えた。


家は隣だから会おうと思えばいつでも会えるっていうのに。


やっと会えたと思ったら、今度はほっとして、すると、頭が空っぽになってしまった。


言葉が出てこない。


「どうしたのさ、陽妃」


海斗が不思議そうに小首を傾げて、あたしの目を覗き込んでくる。


「……へ?」


「へ、って。急に黙り込むからさ」


「あ……えっと……ごめん」


はた、と我に返り、反射的に海斗から離れた。


「な……何だっけ」


この人に伝えたかった言葉は山ほどあったはずなのに。


顔を見たら、声を聞いたら、なんだかすごく安心して。


頭の中からすっぽり抜け落ちてしまったみたいだ。


「ごめん。あの……忘れちゃった」


はは、と苦笑いしてごまかすあたしを見て、


「何か、それ」


海斗もぷはっと吹き出した。


「久しぶりだね。陽妃」


とは言っても、たった4日会っていなかっただけだ。


でも、毎日会っていた分、この数日間はあたしにとってはとても長いものだった。


「うん」


数日ぶりの海斗は相変わらず綺麗な顔立ちだけど。


蛍光灯のような人工的なものではない、月明かりのせいかもしれない。


たった4日の間に、妙に大人びたように見えた。


「よく分かったね。おれがここにおるって」


海水と汗で濡れた髪の毛が頬に貼りつく。


すうっと伸びてきた海斗の指先が、その髪の毛を絡め取った。


ドキ、とした。


「探しに来てくれたのかね」


あたしは「ううん」と首を振った。


「おばあに聞いたの。そしたら、浜だって」


「……そうかね」


何かを悟ったのか、海斗は都合悪そうに苦笑いした。


そして、目を反らし、月の方へ体の向きを変えた。