「オバァや全部、失ったよ。愛していたアヌ人もアヌ子も失ってしまった。やしがね。戦や避けられねーらんたん。仕方ないことやたんさ」
戦……。
「戦争……のこと?」
顔を上げると、おばあは穏やかな眼差しを夜空に向けていた。
月明かりが、おばあの横顔を優しく照らしている。
「ばんない(たくさん)裏切られたよ。ばんない失ったよ。ばんない、悲しかったよ」
やしが、とおばあがゆっくりと視線をずらし、再びあたしを見つめながら言った。
「オバァやカフーさぁ。海斗も美波もおる。やーにも出逢えたんやっさーからね。陽妃」
おばあは、どれくらい悲しい思いをして、どれくらい、泣いたんだろう。
戦争を知らないあたしには、想像もつかないものなのだろう。
たかが失恋ひとつで人間不信になっている自分が恥ずかしくてたまらなくなった。
「……」
恥ずかしくて情けなくてうつむいていると、
「なんで陽妃はそうなんかねぇ。やーはこんなに優しい手ぃーをしているのに、ちゅら子なんに。自信がねーらんかねぇ」
じゃーふぇー(困った)ちゅらさんさー、そう言いながら、おばあがあたしの手に触れ、優しくさすった。
「おばあ……あたし、ちゅらさんじゃないよ。だってあたし、腹黒いもん」
無視しているのか、聞こえていないのか。
確実に前者だと思うけど、おばあはあたしの手をさすりながら続けた。
「失恋や辛いねぇ、陽妃」
「……え」
「うぬイキガ(その男)と陽妃やぁ、縁がねーらんたんだけさ。運命の人じゃなかったのさ」
「や、やだな……おばあ」
戸惑った。
まさかとうに80を過ぎたおばあの口から、まるでガールズトークみたいな言葉が飛び出すとは予想外過ぎて。
「慰めてくれてんの? いいよ、気使わなくて。別にあたしもう大丈夫だし」
「陽妃」
「だから、もういいんだって」
ケタケタ笑うあたしの手をおばあが掴んだ。
「やーの運命の人はかんなじ(必ず)おるよ」
戦……。
「戦争……のこと?」
顔を上げると、おばあは穏やかな眼差しを夜空に向けていた。
月明かりが、おばあの横顔を優しく照らしている。
「ばんない(たくさん)裏切られたよ。ばんない失ったよ。ばんない、悲しかったよ」
やしが、とおばあがゆっくりと視線をずらし、再びあたしを見つめながら言った。
「オバァやカフーさぁ。海斗も美波もおる。やーにも出逢えたんやっさーからね。陽妃」
おばあは、どれくらい悲しい思いをして、どれくらい、泣いたんだろう。
戦争を知らないあたしには、想像もつかないものなのだろう。
たかが失恋ひとつで人間不信になっている自分が恥ずかしくてたまらなくなった。
「……」
恥ずかしくて情けなくてうつむいていると、
「なんで陽妃はそうなんかねぇ。やーはこんなに優しい手ぃーをしているのに、ちゅら子なんに。自信がねーらんかねぇ」
じゃーふぇー(困った)ちゅらさんさー、そう言いながら、おばあがあたしの手に触れ、優しくさすった。
「おばあ……あたし、ちゅらさんじゃないよ。だってあたし、腹黒いもん」
無視しているのか、聞こえていないのか。
確実に前者だと思うけど、おばあはあたしの手をさすりながら続けた。
「失恋や辛いねぇ、陽妃」
「……え」
「うぬイキガ(その男)と陽妃やぁ、縁がねーらんたんだけさ。運命の人じゃなかったのさ」
「や、やだな……おばあ」
戸惑った。
まさかとうに80を過ぎたおばあの口から、まるでガールズトークみたいな言葉が飛び出すとは予想外過ぎて。
「慰めてくれてんの? いいよ、気使わなくて。別にあたしもう大丈夫だし」
「陽妃」
「だから、もういいんだって」
ケタケタ笑うあたしの手をおばあが掴んだ。
「やーの運命の人はかんなじ(必ず)おるよ」



