「しるーくてちゅらさんな(白くてきれいな)手ぃーが可哀想さぁ」


「ああ……木に登ったこと? 大丈夫。平気。もう痛くないし」


「やしが、もう無茶はするな」


「分かったよ。でもね、あの日は仕方なかったの」


美波ちゃんを助けたくて。


よそ者のあたしのこと「ねぇねぇ」って慕ってくれて、受け入れてくれた美波ちゃんの力になりたくて。


「必死だったから」


でももう大丈夫だから、そう言って笑ったあたしを、おばあが鋭い眼光で攻撃してくる。


「なによ……あんまりジロジロ見ないでよ、おばあ」


わざと突っぱねてみると、おばあも十八番の無愛想を返して来た。


「どこがそんなに良いのかねぇ、くぬサンサナー(おてんば)の。わんにや分からねーらん」


「はあ?」


「海斗も美波も。どこがそんなに良いのかねぇ。あったー(あいつら)、やーのことが好きみたいさ」


「ちょっと、おばあ。それ、褒めてんのか貶してんのか分かんないんだけど」


むっとしていると、おばあはまた鼻をフンと鳴らして、


「褒めてやっちょるんやっさー」


ぶつぶつと文句を言うようにぶっきらぼうに顔を反らした。


「それはどうも」


月を見上げるおばあの横顔を見て、思う。


今はもう腰も曲がって、髪の毛は真っ白で、肌はしわしわだけど。


おばあは、美人だ。


若い頃のおばあって、どれくらい綺麗な女性だったんだろう。


そんなことを考えながら横顔を見つめていると、不意に、おばあが話を振って来た。


「海斗と口きいていないんか」


背筋がギクリとした。


あまりにも唐突で、ストレート過ぎて、上手に誤魔化す余裕もなく、反射的に頷くしかない。


「あ……うん」


「そうかね」


「ケンカ……ていうか……あたしが一方的に怒っただけなんだけど。海斗の話も聞かずに。一方的に」