恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

「そこに行けばどんな夢も叶うってさ。誰もが行きたがる世界やしが」


亮介やぁニライカナイにおるさ、と悠真はますます声を震わせた。


「一年前にさ」


長年、体中に故意にため込んでいたものを慎重に吐き出すように。


「初めて人を好きになってね、付き合った。那覇の高校のたーち(ふたつ)年上のひとやたん。友利藍子(ともり あいこ)ていうひとやたん」


それは確かに悠真の身の上話なんだけど。


「藍子やぁ実家は石垣島やったやしが、高校が那覇やさ、親戚のとこに世話になっとった。わんと付き合ってからは週末になるとけーって来て、わんや亮介や里菜とつるんでいたからさ」


まるで、物語を聞いているようだった。


例えば小説。


小説のあらすじを丁寧に読み聞かせするような、優しい話し方だった。


「藍子やぁ東京の大学を目指していたからさ。勉強のできるいなぐやたん。やっさーから、亮介と里菜もよく勉強教えてもらってた」


でも、淡々とした口調でもあって。


煌めく海を眺め、潮風にあおられながら話してくれた、悠真の過去。


「だーるなぁ(そうなだなぁ)」


そして。


「夏の始めやたん。わんのおばあが那覇の病院に入院しとって、お見舞いに行ったんやしがね」


悠真の左耳にぽつりと輝くガーネットのピアスの意味を知った時。


「偶然やたんか。運命やたんか。そん時に、会ってしまったんやさ」


言葉が出て来なかった。


「裏切られちょー思ってさ。頭にきちょー。カッとなってさ。どうんかいも(どうにも)止まらねーらんたん」


ただ、切り傷が風に触れるように、心がシクシク痛んだ。


「恋、てのはさ。何なのかね。ひとを好きになることは幸せなことやんにかね。やしが、周りが見えなくなるんかね。分からねーらん」


全然、全く、分からないわけじゃないから。


「今なら冷静になれるのにね。あん時やぁなれねーらんかった。あん時のわあほど愚かな人間やぁいねーらん」


だって、あたしも。


恋の痛みが分かるから。