恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

あたしも海斗も互いにケンカ腰になり、口調も荒々しくなり、それはエスカレートしていった。


「何でもいいさ! けど、陽妃は誤解しよる!」


「誤解?」


「そうさ!」


「ばかじゃないの? だから、誤解してんのはそっちでしょ!」


「ばかでも何でもかまわんよ! 何か! 怒りよって! 陽妃がそこまで怒りよる理由が分からん!」


「しつこいな! 怒ってないって言ってんじゃん!」


「怒っとるば!」


静かな夜道に言い争う声がやけに虚しく、大きく響く。


月光が白砂地にふたつの影を落としていた。


「何で怪我しよったのか聞いただけなのによ、何でそんなに怒りよるんか!」


「……」


何も答えず返事もしないあたしに、むっとした表情の海斗が一歩詰め寄って来た。


「陽妃よ、おれの話、聞こうともしないしさ」


なんでこんなにむしゃくしゃするんだろう。


そもそも、中途半端に降って上がった夏の雨のせい。


きっと、そう。


「何で話聞いてくれないのさ」


もう一歩、


「陽妃」


また一歩、海斗がじりじりと詰め寄って来る。


「何でか」


中途半端に雨が降ったりしたから。


窒息しちゃいそうなほど蒸し暑い夜になったから。


だから、こんなにむしゃくしゃするんだ。


絶対、そう。


「何でか! 陽妃!」


雷のように大きな海斗の声が月光に包み込まれた集落に小さく木霊して、夏の夜に溶け込んでいった。


しんと静まり返ったあたしと海斗の空間を、夜風がふうっと抜けて行った。


「な……んで?」


まるで時が止まったかのように無風で静かになったその瞬間を待ち望んでいたかのようだった。


フツ。


頭の中で何かが切れる音がして、でもそれは絶対にあたしの気のせいで。


「なんで美波ちゃんは、あの子に脅えるの?」


だけど、確実に、あたしの中で何かの線が切れた。