恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

「海斗は美波ちゃんのたったひとりのにぃにぃじゃん!」


何をしていたの?


あの子と。


葵ちゃんと。


「美波ちゃんがどんな気持ちで……」


あの大きな木に登ったのか、海斗に分かる?


「海斗」


分かるの?


美波ちゃんが……どんなに海斗のことが大好きなのか。


「お願いだから、美波ちゃんを不安にさせないで。寂しい思いさせないでよ!」


今日、海斗が居ない間に。


美波ちゃんがその小さな体と純粋な心をどれだけ痛めてしまったのか。


傷付けられたのか。


分かる?


「今日、どこに行ってたのよ! 誰と、どこで、何してたの!」


あの子と。


どこで何をしていたの。


訳の分からない憤りが胸の奥からぐつぐつと煮えたぎるように沸いてくる。


「なに……興奮しとるか……何があったのか話してくれんと何も分からん」


だって。


何を、何から、どこから、どう話せばいいのかすら分からない。


だって。


何で、よりによってあの子なの。


何で、葵ちゃんなの。


「分かんないならいい」


どいて、と海斗の横をすり抜けようとした時、右足首に鈍痛が走り、


「いっ……」


とっさにそこを押えながらしゃがみ込んだ。


右足首がドクリドクリと脈打つ。


「足、怪我しよったんかね!」


大丈夫か、としゃがみ込んだ海斗の手が伸びてくる。


「足首か?」


「触んないで!」


あたしは金切り声によく似た声を上げ、肘で海斗を突き飛ばした。


「あがっ」


ハッとした時、海斗はバランスを崩して地面に尻餅をついた後だった。


海斗の手から飛ぶように離れた懐中電灯がゴロゴロ転がっていた。


初めて、嫌だと思った。