恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

「いいさ。とにかく傷の手当てが先さ」


と海斗があたしの体を手繰り寄せるように手を引いたけれど、


「……海斗はっ?」


あたしは喉から汚い声を絞り出して、その手を振りほどいた。


「えっ?」


「海斗はどこに行ってたのよ!」


しんと静かな集落の片隅にあたしのしゃがれた声虚しく響いて、夜に吸い取られていく。


「今日、誰とどこで何してたの!」


苛立ちを隠し切れないとげとげしい言い方をしたあたしを、


「……なに怒ってるのさ、陽妃」


ミステリアスで綺麗な瞳が純粋な輝きを放ちながら見つめてくる。


その純粋さがあたしの苛立ちに触れる。


「別に怒ってんじゃないって!」


言葉とは裏腹に、明らかに険悪でケンカ腰に返したあたしに、


「怒っとるば!」


さすがの海斗も表情を歪めた。


睨み合うあたしと海斗の空間に、ギスギスした重い空気が漂う。


次第にあたしの頭の中はぐっちゃぐちゃになった。


「だから怒ってないって言ってんじゃん! ばかじゃないの?」


もう、今更後に引けなくなってしまっていた。


この苛立ちを鎮火する術が見つからない。


見当すらつかない。


ただ漠然と、けったくそがわるい。


「美波ちゃんひとりにして、どこ行ってたのよ!」


あの子と……。


「おじさんもおばさんも仕事忙しいの分かるでしょ? 何かあった時、美波ちゃんが頼れるのは海斗なのに……海斗は美波ちゃんのお兄ちゃんなのに!」


あの子と……葵ちゃんと一緒だったの?


「美波ちゃん、まだ小学生なんだよ。おじさんもおばさんも忙しい時、頼れるの海斗しかいないじゃん」


どこに行ってたの?


あの子と、どこに行ってたの?