恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

「おばあのとこかと思ってさ、行ってみたけど、居ないしさ」


本当に心配してくれていたんだと思う。


けれど、それすら判別できないほど、あたしの感情はぐにゃりといびつに歪んでしまっていた。


「聞いとるかね、陽妃」


心配して言ってくれているのは分かっているのに、その溜息も口調も、まるであたしを責めているようにしか聞こえない。


海斗はそういう人間じゃないと、頭では分かっているのに。


高校生にもなって、一体、何をしているんだ、と。


妹を連れまわして怪我を負わせるような事をして、と。


責め立てられている気がしてむしゃくしゃした。


高校生のお前が一緒に居ながらこれはどういう事なんだ、と説教されている気がして、


「今までどこで何してたのさ、陽妃」


次の一言にカッとなった。


「言えないような事でもあったんか」


思わず、拳を握った。


口を真一文字に結んで、あたしは海斗を睨み付けた。


たぶん、あたしは今、酷い顔をしている。


海斗の背後で美波ちゃんが大きな瞳を泳がせて、ハラハラした様子であたしの顔を見ていた。


言えるものか。


美波ちゃんが居る前で、何をどう説明すればいいと言うのだろう。


ここで全てをべらべらと話しても、また美波ちゃんが心を痛めるだけだと思う。


海斗は何も知らないから、簡単に聞いてくるけど。


あたしには簡単に言う事なんてできない。


あたしの心を歪ませ掻き乱した感情はイライラするとか、むしゃくしゃするとか、そういう次元の問題じゃなかった。


けったくそがわるい。


切り傷、擦り傷がジンジン火照る。


ぐじゅぐじゅに化膿したように、傷口が痛む。