友寄透くんという男の子から挑発を受けて、美波ちゃんがデイゴの木に登ってしまったのだ、と。
でも、あたしは説明するどころか、その場から動くことができなかった。
ビーチサンダルの底に強力な接着剤でも付着してしまっているかのように、ただそこに突っ立った。
動くことができなかったのではなくて、動きたくもなかった。
「陽妃」
海斗に呼ばれても、返事をしなかった。
返事をする事ができなかったのではなくて、しなかった。
返事なんてしたくなかった。
「……陽妃?」
「……」
白い夜道が、月光を跳ね返して細かく輝いて見える。
あたしの足元から伸びる影。
あたしが影なのか、地面にのっぺりと伸びたシルエットがあたしなのか、よく分からなくなった。
向こうにポツと輝く一等星に目を細める。
「どういう事か。何があったのさ」
海斗が懐中電灯を握り締めて、ずんずん歩み寄って来た。
「にぃにぃ、あのさ、美波さ、あのさ」
追いかけて海斗のTシャツの裾を掴んだ美波ちゃんには脇目もくれず、海斗は詰め寄るように歩いて来て、
「何で何も答えないのさ、陽妃。何で黙ったままなのさ」
棒立ちするあたしの腕を掴んで、そして、ぎょっと目を見開いた。
「何で……美波も陽妃も怪我しとるのさ……何があったのか?」
「……」
何も答えずに口を閉ざし続けるあたしに、海斗は困り果てた顔で溜息を落とした。
その溜息に、心がぐにゃりと歪んで行くのが分かる。
「一体どこに行って来よったのか。こんな時間まで。もう7時過ぎよったのに」
海斗は本当に心配したんだと思うし、その表情を見れば分かる。
でも、あたしは説明するどころか、その場から動くことができなかった。
ビーチサンダルの底に強力な接着剤でも付着してしまっているかのように、ただそこに突っ立った。
動くことができなかったのではなくて、動きたくもなかった。
「陽妃」
海斗に呼ばれても、返事をしなかった。
返事をする事ができなかったのではなくて、しなかった。
返事なんてしたくなかった。
「……陽妃?」
「……」
白い夜道が、月光を跳ね返して細かく輝いて見える。
あたしの足元から伸びる影。
あたしが影なのか、地面にのっぺりと伸びたシルエットがあたしなのか、よく分からなくなった。
向こうにポツと輝く一等星に目を細める。
「どういう事か。何があったのさ」
海斗が懐中電灯を握り締めて、ずんずん歩み寄って来た。
「にぃにぃ、あのさ、美波さ、あのさ」
追いかけて海斗のTシャツの裾を掴んだ美波ちゃんには脇目もくれず、海斗は詰め寄るように歩いて来て、
「何で何も答えないのさ、陽妃。何で黙ったままなのさ」
棒立ちするあたしの腕を掴んで、そして、ぎょっと目を見開いた。
「何で……美波も陽妃も怪我しとるのさ……何があったのか?」
「……」
何も答えずに口を閉ざし続けるあたしに、海斗は困り果てた顔で溜息を落とした。
その溜息に、心がぐにゃりと歪んで行くのが分かる。
「一体どこに行って来よったのか。こんな時間まで。もう7時過ぎよったのに」
海斗は本当に心配したんだと思うし、その表情を見れば分かる。



