恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

海斗が葵ちゃんの腕をぐいとたぐり寄せるように掴んで、


「ほら」


と懐中電灯をしっかりと握らせた。


たまらず息を押し殺し、とっさに唇を結んだ。


そうでもしないと声を出してしまいそうだった。


触らないで欲しい、と思った。


その子にだけは触れて欲しくない、と思った。


その光景を見て固まっていた美波ちゃんが小さな背中を丸くして、しゅっと肩をすくめた。


「……ありがとう」


とやけにしおらしい声で言いながら懐中電灯を受け取り、恥ずかしそうにうつむく葵ちゃんを見ていたら、泣きたくても涙が出て来ないような、何とも説明しがたいもどかしさに襲われた。


「本当に送って行かんでもいいのかね」


海斗の声。


「いいって言っとるばー。すぐ裏やもん。しつこいやっさー」


葵ちゃんの声。


「葵よー、いなぐ(女)のくせにさ、何でそんなへそ曲がりなのかね」


海斗の、優しい話し方。


「かしましい。わんねえ、そこらのいなぐと一緒にしないでよ」


葵ちゃんの、強がりたっぷりの言い方。


……本当は、送って欲しいくせに。


あたしは唇を結んだまま、静かに奥歯をこすり合わせた。


胃の辺りで毒々しい感情が渦を巻いていた。


「そんなら、葵が見えなくなるまでここで見とるさ」


それならいいかね、と海斗が困ったような声で聞くと、ややあって「うん」と返事が聞こえた。


「気を付けてな、葵」


「海斗」


食い気味に聞こえたその声はどこか苛立ちを含んだもののように聞こえた。


「海斗、さ」


「何か」