恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

「あが……あがー」


「って、ててて」


あちこち擦り傷と切り傷だらけで、だけど、げらげら笑いながら。


ギクリシャクリと失敗作のロボットのように、月に照らされた明るい夜道を。











家の側に着いた時にはもう、あたりはしっかりとした夜に包み込まれていた。


珊瑚造りの石垣の塀を右に曲がると、


「あっ!」


自宅の玄関先に明りがついているのを指さして、


「にぃにぃが帰って来よったんや」


美波ちゃんがキャッキャとはしゃいだ。


たった今、体中についた傷をしきりに気にして顔を歪めていたのに、それすら忘れてしまったかのように。


「みたいだね」


あたしがにっこり微笑むと、美波ちゃんはニーッと白い歯をこぼれさせて、あたしの手を離した。


「ねぇねぇも行こう」


「うん」


「にぃに――」


美波ちゃんがタッと駆け出そうとした、次の瞬間。


石垣の門から、すうっと人影が出て来た。


「ほんならね、海斗」


聞こえてきたその声と同時に、ジャリと砂地とビーチサンダルが摩擦する音がして、美波ちゃんが立ち止まった。


明るい月光に小さな背中がほんのりと照らされ、バックプリントのハイビスカスが白く輝く。


正面に昇る月が、まるで夜の太陽のように煌々と輝いていた。


なんて息苦しい夜なんだろう。


さあっ、と集落を吹き抜けた風はじっとりと肌にまとわりつき、そして、やがて静かになった。


比嘉家の門から出て来た人影は月明かりを受けて、灰色のシルエットになって見える。


あたしはそこに突っ立ったまま、目を細め、息を飲んだ。


集落に、街灯など1本も無い。


明りと言えば月光と、家屋から漏れる明りだけだ。